ダーケストアワー

消滅

2012/11/12 シネマート六本木試写室(スクリーン3)
モスクワ滞在中に宇宙人襲撃に遭遇した青年たちの運命は。
もともとは3D映画だが日本は2D上映。by K. Hattori

Darkesthour  新しいSNSをロシアに売り込もうとモスクワにやって来たアメリカ人青年2人組がナイトクラブに繰り出すと、突然の停電に人々はあたふたしながら店の外へ。そこで見たのは、空からゆっくりと降下してくる美しい光の群れだった。だがその光に触れた者は、一瞬にして粉々に砕け散って一握りの灰になってしまう。宇宙人による地球侵略が始まったのだ。主人公たちは周囲の数人と共に大慌てで店の倉庫に逃げ込み、攻撃の第一波から逃れることに成功する。倉庫の食料もあらかた尽きて外に出てみると、そこは無人のゴーストタウン。主人公たちは他の生き残りを探してモスクワの街を移動して行くが、そこにもあの「光」が現れるのだった……。

 原案・脚本は『プロメテウス』の脚本にも参加しているジョン・スペイツで、製作が『ウォンテッド』や『リンカーン/秘密の書』のティムール・ベクマンベトフだというのを売りにしているが、監督のクリス・ゴラックも出演者たちもさほど有名とは言えない中堅どころ。それでも無人の廃墟になったモスクワの風景などビジュアル面では見どころが多く、宇宙人に取り囲まれた数人の人間が危険から脱出するというシンプルな物語の力強さもあって、映画としてはそこそこ楽しめるものになっている。雰囲気としては『世界侵略: ロサンゼルス決戦』に近いが、あちらは軍人でこちらは民間人だから、置かれている状況には違いも出てくる。どちらにより共感できるかというと……、そもそも設定自体が荒唐無稽だから似たようなものか。『世界侵略〜』がアーロン・エッカート中心に無名キャストを配していたのに対し、『ダーケストアワー』は全員が無名キャストなので、誰が最後まで生き延びられるのかがわからないというスリルがある。

 しかしながら、これは「そこそこ楽しめる」というレベルで終わってしまっている映画でもある。これは同じ設定で、60分×6回ぐらいのミニシリーズにした方が面白いのかもしれない。映画はテレビドラマのパイロット版かダイジェスト版のような、急ぎ足の印象がある。各エピソードをもっと膨らませて、より大きな物語を作れるだけのネタは、この映画の中に全部仕込まれていると思うのだ。この映画ではそこを駆け足で通り過ぎていくので、都合良く奇妙な発明家が出て来たり、都合良く自警団が出てきたり、都合良く潜水艦が待っていてくれたりする。本当はもっといろいろな選択肢の中で、紆余曲折しながら話を進めた方が面白いだろうに。人物も掘り下げられて、観客が共感したり感情移入したりできる要素も増えていくはずだ。

 この映画ではフルコースの料理を、たった10分で食べさせるようなものだ。食べかけの皿があっと言う間に下げられると、すぐに次の皿が登場する。味見の繰り返しのようで、ひどく慌ただしい。こちらとしてはひとつずつの皿を、もっとゆっくりと味わわせてほしいのに。

(原題:The Darkest Hour)

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12月1日公開予定 シネマート六本木、シネマート新宿
配給・宣伝:エスピーオー
2011年|1時間30分|アメリカ|カラー|スコープサイズ
関連ホームページ:http://video.foxjapan.com/movies/darkesthour/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入Blu-ray:Darkest Hour
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