ユニバーサル・ソルジャー

殺戮の黙示録

2012/09/27 京橋テアトル試写室
これは『ユニバーサル・ソルジャー』版の『地獄の黙示録』。
シリーズ中最も血なまぐさい描写にびっくり。by K. Hattori

Us4  1992年の1作目以来、途中テレビシリーズなどもはさみながら製作が続けられ、映画版としてはこれで4作目となる『ユニバーサル・ソルジャー』シリーズの最新作。1作目ではアクション・スターのジャン=クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンの共演が話題となったが、7年後に製作された2作目ではラングレンが一度離脱。だがさらに10年たって作られた3作目には、ラングレンが復帰してファンを喜ばせた。今回の映画もヴァン・ダムとラングレンのオリジナルコンビが登場しているが、今回はこれまでのシリーズとはだいぶ様子が違う。ヴァン・ダム&ラングレンのコンビは物語の前列から背景に下がり、新たに登場したスコット・アドキンスが新しい主人公になっているのだ。ひょっとすると『ユニバーサル・ソルジャー』は今後、アドキンス主演の新しいシリーズとして再スタートするのかもしれない。今回の映画をそのための「序章」と考えると、幾つかの設定変更がそのための布石に思えてくるのだ。

 妻や娘と共に守られていたジョンの平和な生活は、ある晩自宅に侵入した暴漢たちによって叩き潰された。暴漢たちはジョンの目の前で彼の妻子を射殺し、ジョンにも重症を負わせて逃走したのだ。ジョンが病院のベッドで目を覚ましたのはそれから9ヶ月後。既に体の傷は癒えていたが、妻子をむごたらしく殺されたという心の傷と怨みは消えない。何しろ彼にとって、それはほんのついさっきの出来事なのだ。外傷性の記憶障害で自分の過去の経歴などをほとんど忘れているジョンだが、妻子を残忍に殺害した犯人の顔はしっかりと覚えている。犯人の名はリュック・デュブロー。ジョンはデュブローへの復讐を心に誓うのだった。

 映画冒頭でジョンの家が暴漢たちに襲われるところから、この映画は残酷描写のオンパレードだ。おそらくこれは、シリーズ中でも最も血なまぐさく残酷な映画だろう。拳銃で、ショットガンで、ナイフで、バットで、次から次に人間の肉体が破壊されていく。映画を観ていると、スクリーンのこちら側にまで血糊が飛んで来そうな勢いがある。そうした描写に爽快感やカタルシスを感じる映画もあるが、この映画はそうではない。暴力描写はひたすら陰惨で、どれも強い痛みを感じさせるものだ。ヴァン・ダム主演の爽快アクション映画だと予想していると、この映画を観て戸惑うことになる。

 しかしこの映画で一番戸惑わされるのは、ヴァン・ダム演じるリュック・デュブローの変化だろう。映画の終盤に、奇妙なメイクで登場した時には度肝を抜かれた。そしてようやくわかったのだ。これは『ユニバーサル・ソルジャー』のキャラクターを借りて、『地獄の黙示録』をやっているのだと。リュックは『地獄の黙示録』のカーツ大佐で、彼の王国を目指すジョンはウィラード大尉なのだ。そういや今回の映画の副題は、『殺戮の黙示録』だった。原題も『Day of Reckoning』だから、黙示録に書かれている「裁きの日」のことだな。

(原題:Universal Soldier: Day of Reckoning)

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11月3日公開予定 銀座シネパトス
配給:日活
2012年|1時間54分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.vandamme-matsuri.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:ユニバーサル・ソルジャー・シリーズ
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