踊る大捜査線
THE FINAL

新たなる希望

2012/09/25 楽天地シネマズ錦糸町(シネマ3)
15年前に始まった人気刑事ドラマシリーズがようやく完結。
関係者の皆さんにはお疲れさまでした。by K. Hattori

Odoru_final  「踊る大捜査線」が最初にテレビ放送されたのは1997年1月から3月。警察組織をサラリーマン社会として描く異色の刑事ドラマとして人気があり、数本のテレビスペシャルを経た後に劇場版の第1作目が1998年10月に公開されて記録的な大ヒットとなった。映画がヒットすれば続編を作るのが王道の戦略で、劇場版第2弾が2003年7月に封切られ、テレビスペシャルやスピンオフ作品などを間にはさんで2010年7月に劇場版第3弾が公開される。僕はこの第3弾で映画も終わりだろうと踏んでいたのだが、ヒットの旨味が忘れられない映画会社は完結編と銘打った第4弾を製作。それが今回の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』だ。

 僕は前作『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』が事実上のシリーズ完結編だと考えているし、今回の映画を観てもその思いはますます強くなるばかりだ。おそらく映画の作り手たちも、同じことを考えていたのではないだろうか。この映画はシリーズ完結を祝う、壮大なカーテンコールだ。これまで映画に登場した主要キャラクターを一堂に集め、それぞれの役柄に相応しい見せ場を作ることだけに専念している。登場キャラに多少の漏れはあるものの、水野美紀が演じる真下雪乃が久しぶりに登場したことは、シリーズのファンにとって何より嬉しいプレゼントだろうと思う。しかしこの映画はカーテンコールだ。登場人物たちがずらりと勢揃いしても、物語の幕は彼らの後ろで既に下りている。

 映画第1作が公開された時、僕はこのシリーズがずっと長く続けばいいと思った。やりようによっては、シリーズをさらに10年でも20年でも続けていくことはできたはずだ。しかしこの映画はファンに愛されたがゆえに、結果としてここで完結せざるを得なくなってしまったのだと思う。ファンも作り手たちも、登場人物と彼らの生み出す関係性の面白さを愛していた。とても愛していた。しかしそれゆえに、そうした登場人物のキャラクターや関係性を壊せなくなってしまったのだ。人間は時間と共に、少しずつでも変わるものだ。永久に変わらない人間はいない。永久に変わらない関係性はない。それが人間の生きている、リアルな世界の現実だろう。しかし『踊る大捜査線』のファンは、作品を愛するがゆえにそれを許さなかった。作り手も途中からファンの期待に応えることに専念し、登場人物たちを変化させないことを選択した。その結果、湾岸署には大きな人事異動がない。閉じた人間関係の中で、事件が起きては解決するという堂々巡りが繰り返され、登場人物たちはそこで過去に自分たちが演じた芝居をなぞるだけになった。

 この映画に『新たなる希望』があるとすれば、これによってようやく人気キャラたちを引退させることができることだろう。シリーズに今後があるとすれば、次はスタッフもキャストも一新されるはずだ。

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9月7日公開 全国ロードショー
配給:東宝
2012年|2時間6分|日本|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.odoru.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
関連書籍:「踊る大捜査線 THE FINAL」 COMPLETE BOOK (ぴあMOOK)
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ノベライズ:踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
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