ハイザイ

〜神さまの言うとおり〜

2012/08/02 京橋テアトル
沖縄アメリカンビレッジ内のデポアイランドを舞台にしたコメディ。
ラッキーカラーズを知ったのが収穫……かな。by K. Hattori

Haizai  大型の複合商業施設(ショッピングモール)を舞台に、観光にやって来たカップル、人違いで拉致された女と拉致した若いやくざ、女子高生などが繰り広げるドタバタコメディ。物語の舞台になっているのは、沖縄県北谷町のアメリカンビレッジ内に2010年オープンしたデポアイランド。施設側全面協力のもと、この一角で映画を撮ろうという企画があった上での映画だと思うのだが、この映画は別にこの場所が舞台でなくても成り立つなぁ……というのが正直な感想。施設は海岸沿いにあり、カメラアングルによっては施設から海が見えるはずなのだが、そうした立地を示すようなビジュアルは映画の中にまったく登場しない。この映画を観る限り、デポアイランドは国道沿いに忽然と現れる、周囲の景観とまったくマッチしない正体不明の無国籍ショッピングモールなのだ。

 物語は3組のペアが登場するショートストーリーだが、オムニバス形式にはせず、各エピソードを同時進行させながら各話がゆるやかに交差する構成だ。最初は雑貨店で店員不在の隙を見て万引きしようとしていた女(ともさかりえ)が店長に間違われ、若いやくざ(落合モトキ)に拉致される話。拉致された車の中で交わされるふたりの会話が面白いが、このエピソード自体にこれといったオチはない。

 次は沖縄観光に来た広告代理店勤務のチャラ男(深水元基)と恋人(吹田早哉佳)に、石つぶてを投げつける男が付きまとう話。ところがチャラ男はこれを、昔つきあっていた恋人の焼き餅だと勘違いして素っ頓狂な行動を始める。これは映画の中で時間的にも空間的にも一番広がりのあるエピソードで、それだけ面白いものになっている。

 最後に沖縄限定のローカルアイドルユニット、ラッキーカラーズの5人が登場する女子高生のエピソード。コックリさんで「余命は10年」と予告された少女(ALISA)は、口ではこんなの気にしないと言いながら、じつはそのことがひどく気になっている。そこで予言がウソであることを証明するため、友人(MINA)と一緒にとんでもない実験を試みる。

 これは例えてみればスナック菓子みたいな映画なのだ。長編映画ではあるが、上映時間は1時間14分とコンパクト。これ1本ではとてもお腹いっぱいにはなれない。しかしそれなら物足りないかというと、別にそういうわけでもない。口寂しい時にポリポリ食べていればそれなりに美味いし、後を引くものでもある。これだけで満腹になれば胸焼けしそうだが、そうならない袋のサイズでちょうど食べきれるところがいい。もちろん観光映画としては成り立っていないし、観た後で周囲に吹聴して回るほど特別な面白さがあるわけでもない。スナック菓子というのは、要するにそういうポジションなのだ。でもこの映画を観れば「今度沖縄に行く時はアメリカンビレッジに行ってみようかな」と思うかもしれない。それでいいのだ。

Tweet
9月1日公開予定 キネカ大森、シネマート六本木
配給:アルゴ・ピクチャーズ
2012年|1時間14分|日本|カラー|アメリカンビスタ
関連ホームページ:http://www.haizai-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連商品:商品タイトル
ホームページ
ホームページへ