プロメテウス

2012/07/13 20世紀フォックス試写室
R・スコットが自ら手掛ける『エイリアン』シリーズの最新作。
世界観の緻密さが魅力であると同時に弱点。by K. Hattori

Prometheus  1979年に製作公開されたSFスリラー映画『エイリアン』。大ヒットしてシリーズ化され、これまでに3本の続編と2本のスピンオフ映画(『エイリアンVSプレデター』とその続編)が作られている人気作だ。『プロメテウス』はこの人気シリーズと世界観をゆるやかに共有しながら、まったく新しい世界を新たに構築して行くSFスリラー大作。監督は『エイリアン』シリーズの1作目を撮ったリドリー・スコットだから、これは映画ファンにとっては大事件。ただし配給会社はこのことをあまり前面に出した宣伝をしたくないようで、宣伝用のチラシや配付資料などにも『エイリアン』シリーズとのつながりについてはあまりはっきり書かれていない。続編やシリーズ作品はどうしても観客を限定してしまうので、それを避けて新しい作品として売っていきたいのかもしれない。今回の映画はシリーズのプリクエル(前日譚)にあたるので、とりあえずこの映画だけ単独で観ても話は通じるようになっている。

 地球上の古代遺跡で次々に見つかる共通のモチーフから、太古に地球を訪れた異星人のメッセージを見出した科学者たち。宇宙船プロメテウス号はそのメッセージを頼りにして、星図に示された遙か遠い惑星を目指す。女性科学者のエリザベスは、太古の異星人こそが人類誕生のきっかけを作った「エンジニア」だと考えていた。だが訪れた星は荒涼とした砂漠の惑星。しかしプロメテウス号の乗組員たちは、そこで地球外生命体の巨大遺跡と、彼らの遺体を発見する。ホログラム記録によれば、彼らはそこで何かに追われて必死に逃げようとしていた。やがてプロメテウス号の乗員たちも、その何かに追われることになる……。

 物語の中ではいくつもの「なぜ?」が次々に提示されていくが、そうした疑問やそれを解決するための仮説には必ずしも事実の裏付けがないものもあり、少し落ち着いて考えれば筋の通らぬことばかり。脚本は連続ドラマ「LOST」のデイモン・リンデロフが担当しているが、1本の映画の中にあれこれ詰め込みすぎてあちこちで消化不良の胸焼けを起こしているとしか思えない。胸焼けしてもそうとは気づかれないよう、エピソードをテンポよくさばいていくのは、リドリー・スコットの確かな腕前があればこそだろう。ただし内容的には、エピソードが継ぎはぎになっている印象が否めず、映画冒頭で見られた時間的にも空間的にもスケールの大きな世界観が、映画終盤で小さくしぼんでしまったような印象を受ける。

 この映画はこれまでの『エイリアン』シリーズに直結するものではなく、シリーズと同じ世界観をゆるやかに共有した別の世界の物語だと考えた方がいいのかもしれない。映像表現技術が進歩した結果、既存の『エイリアン』シリーズより前の時代の話なのに、劇中に登場するテクノロジーがより未来型に進化してしまったのだ。

(原題:Prometheus)

Tweet
8月24日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか
配給:20世紀フォックス映画
パブリシティ:ドリーム・アーツ、アンリミテッド
2012年|2時間4分|アメリカ|カラー|IMAX、シネマスコープ|ドルビーSR・SRD、DATSAT
関連ホームページ:http://www.foxmovies.jp/prometheus/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:プロメテウス
関連書籍:Prometheus: The Art of the Film
関連書籍:ブック・オブ・エイリアン
関連書籍:エイリアン・コンプリートブック
ホームページ
ホームページへ