名探偵コナン

11人目のストライカー

2012/05/05 TOHOシネマズ上大岡(スクリーン8)
予告されたサッカースタジアムの爆破テロを食い止めろ。
Jリーグ20周年とのコラボ作品。by K. Hattori

Meitantei_konan16  劇場版『名探偵コナン』シリーズ16作目。今回は今年20周年を迎えるJリーグとのコラボレーション作品で、三浦知良、遠藤保仁、今野泰幸、中村憲剛、楢崎正剛など、実在のJリーガーが声優として参加している。Jリーグ発足時から選手としてプレーしている三浦カズが、ワンポイントとは言え物語の中に結構重要な役柄でからんでくるのは、Jリーグのファンならずとも感慨無量だろう。

 毛利探偵事務所に届いた爆破予告のメッセージ。犯人は暗号メッセージで犯行の場所を示唆する。それは観客で満員のサッカースタジアムだった。電光掲示板に仕掛けられた大量の爆弾が炸裂してスタジアムは半壊するが、試合を中断して間一髪で観客を避難誘導したため死傷者はゼロ。いったい犯人は誰か。それがわからないまま、犯人はさらなる犯行予告の暗号を伝えてくるのだった……。

 単独犯人が大量の爆弾を手に入れ、しかも巧妙な起爆装置や起爆解除スイッチを仕掛けられるものなのかなど、少し考えれば荒唐無稽もいいところ。しかし物語がテンポよく進行していくため、そうした無茶をあまり気にすることなく映画を観ていることができる。こうした映画は立ち止まってはいけないのだ。坂道を駆け下りるように序盤から物語をどんどん加速させて、途中であれこれ余計なこと(作り手にとって不利な事柄)を観客に考えさせないようにしなければならない。この映画はそのあたりの呼吸が巧みで、序盤から中盤までは実にスムーズに物語を引っ張っていく。

 ただし映画のクライマックスになると、それもさすがに息切れしたように思う。試合中にボールをクロスバーに当てると起爆装置が解除されるというアイデアは面白いが、すべての試合会場でそれがあまりにも簡単に達成されすぎると、この設定がスリルを生み出さなくなってしまう。プロのサッカー選手でさえ、試合中に狙ってクロスバーに当てるのは難しいはず。その難しさを十分に描いておけば、制限時間内にすべての起爆装置を解除できるのかというスリルが高まっただろうし、その難しいクロスバー狙いを最後にコナンが成し遂げられるかという緊迫感が否応なしに増したはずなのだ。本当ならクライマックスになるはずの終盤が、単なる犯人当てや犯人の動機説明に費やされてしまったのは残念だ。爆破予告の対象になっている競技場に、蘭や園子を置くという設定もまったくスリルを生み出していない。

 こうして物語のテンポが落ちてしまうと、犯人の告白する犯行動機がやけに回りくどかったり、犯行手口がご都合主義であることが気になってきてしまう。1分ごとに爆弾が大爆発する中で少年探偵団とコナンが抜群のチームワークを見せるくだりなどは、緊迫したアクションに小学生の組み合わせというバカバカしさが先に立ってしまい、思わず犯人に同情してしまった。こんなスーパー小学生が相手では、どんな犯人も分が悪すぎるだろう。

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4月14日公開 全国東宝系
配給:東宝
2012年|1時間50分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.conan-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:名探偵コナン 11人目のストライカー
主題歌CD:ハルウタ(いきものがかり)
ノベライズ:名探偵コナン 11人目のストライカー
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