映画 紙兎ロペ

つか、夏休みラスイチってマジっすか!?

2012/04/25 東宝試写室
TOHOシネマズ利用者にお馴染みのロペとアキラ先輩が長編デビュー。
これも日本のアニメーションなのだ。by K. Hattori

Kamiusagi_rope  全国のTOHOシネマズで、2009年からCM予告編の合間に上映されていた短編アニメ「紙兎ロペ」の長編版。僕は近所のTOHOシネマズを時々利用するのだが、短編版の「紙兎ロペ」があまり印象に残っていない。ただし短期間に集中して何本か映画を観た際、「カレー編」だけはやたら何度も観ることになり、これだけは強く印象に残っている。ちょっとレトロな感じを受ける東京下町風の風景の中で、ほとんど無表情なウサギとリスの先輩後輩コンビが、特にストーリーらしいストーリーもないユルユルの世界を展開する作品だ。長編版も基本的にはそうした世界観を踏襲しているが、長編らしく宝石泥棒を巡るドラマチックなストーリーが展開する。

 物語の舞台は東京葛飾区がモデルになっているそうだが、フォトリアリスティックな背景画はまるごと写真をトレースしているか、写真を加工したものだと思う。(ただし大きな画面で見ると、看板や貼り紙にあちこち小さなギャグが散りばめられてあって面白い。)紙兎ロペと紙リスのアキラ先輩がいかにも今の高校生がしゃべりそうな日常語で会話しているのがこの作品の面白さで、この掛け合いの面白さだけで特に大きなドラマのない短編でも面白く観られてしまうのだ。

 今回の映画はロペとアキラ先輩が夏休み最後の1日をどう過ごすかという話なのだが、この「夏休み中の1日限りの冒険」とういアイデアは名作『スタンド・バイ・ミー』などにもある青春映画には定番の設定だ。この映画は手垢の付いたこの定番設定を借りてくることで、これから起きる荒唐無稽な大冒険に一定の枷をはめる。早朝の学校プールから物語が始まり、ラジオ体操、アイスキャンデー、用水路での釣り、最後に残った宿題の自由研究、映画、スイカといったアイテムが次々に出てくる。おそらくは誰もが郷愁を誘われる、夏休みの風景だろう。

 ただしこうした小ネタだけで1時間半は持たないので、映画はそこに大きなドラマを投下する。夏休みの自由研究を残したアキラ先輩が、研究テーマに選んだのはツチノコ探し。そこに上野の博物館から古代エジプトの宝石を盗み出した怪盗団の物語がからむという展開だ。ツチノコ探しという話で主人公たちを常に移動させ、そこに怪盗団をからめて追いかけっこのサスペンスを作り、最後は大規模なアクションシーンで長編映画版としてのスペクタクルを作るという構成はなかなかよく考えられている。主人公たちが何らかの目的に向けて移動を続け、その間にさまざまな人や事件に出会っていくというのはロードムービーだ。この映画はそこに1日の出来事にすべてを納めるという時間的な縛りを加えて、物語の密度を維持している。

 この映画製作のためにTOHOシネマズの短編上映はしばらくお休みしていたようだが、この5月以降はまた上映が再開するようだ。長編版も楽しかったが、短編も楽しみにしたいと思う。

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5月12日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
配給:東宝映像事業部 宣伝:エレクトロ89
2012年|1時間22分|日本|カラー
関連ホームページ:http://kamiusagi.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:紙兎ロペ
DVD:紙兎ロペ 2(セカンドシーズン)
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