アンネの追憶

2012/02/24 松竹試写室
ホロコーストの中で命を落としたユダヤ人少女の物語。
「アンネの日記」の由来とその後日談。by K. Hattori

Annenotsuioku  池上彰が「世界を変えた10冊の本」の中に、聖書やコーランと共に取り上げた「アンネの日記」。これはその著者アンネ・フランクの伝記映画だ。「アンネの日記」はこれまでにも何度か映画やテレビドラマになっていて、日記以外の部分も含めたアンネ・フランクの伝記も何本か作られている。例えば2001年にアメリカで作られた「アンネ・フランク」は、メリッサ・ミュラーの「アンネの伝記」をもとにしたテレビドラマ。そして本作『アンネの追憶』は、アリソン・レスリー・ゴールドがアンネの親友ハンナ・ホスラーにインタビューした「もうひとつの『アンネの日記』」が原作だ。(同じ「もうひとつのアンネの日記」というタイトルのテレビドラマもありDVDも出ているが、これはフランク一家を匿ったミープ・ヒースの視点からのドラマらしい。ミープ・ヒースの手記は「思い出のアンネ・フランク」というタイトルで邦訳が出ているが、この本の共著者もアリソン・レスリー・ゴールドだ。)

 アンネ・フランクはドイツのフランクフルトで生まれたドイツ系ユダヤ人であり、1934年に一家でオランダに亡命して、1942年から隠れ家での生活が始まり、2年後に逮捕されて悪名高いポーランドのアウシュビッツ収容所に送られ、さらにドイツのベルゲン・ベルゼン収容所に移送された後、ナチスが降伏する2ヶ月前、1945年3月頃に亡くなっている。享年15歳9ヶ月。しかしこの『アンネの追憶』は英語作品。製作国はイタリアで、もともとはテレビドラマだったらしい。主人公アンネを演じるロザベル・ラウレンティ・セラーズはロサンゼルス出身だが、父オットーを演じるエミリオ・ソルフリッツィやラビを演じるモーニ・オヴァディアなどはイタリアの俳優。監督のアルベルト・ネグリン、音楽のエンニオ・モリコーネなどもイタリア人。映画を観ている限りでは、俳優たちの口の動きと台詞がシンクロしているので、これはもともと英語で撮影されていたのだろう。

 作品の規模としてはテレビ映画の限界も感じるが、その限界が功を奏しているところもある。ユダヤ人たちが貨車に詰め込まれて到着したアウシュビッツ収容所で、老人と子供、男と女に区分されて、家族が引き裂かれてゆく場面がそれだ。夜半の到着で周囲は真っ暗。貨車から引きずり下ろされた人がごった返して見通しが利かず、ドイツ兵の怒鳴り声、ユダヤ人たちの悲鳴や叫び声、そこに白々しく囚人たちの演奏するシュトラウスのワルツが流れる。多くの家族がここで生涯最後の別れをしたという意味で、これはその後に出てくるガス室や焼却窯よりも恐ろしい風景かもしれないと思う。

 映画の構成としては、アンネのたどる運命とハンナ・ホスラーの物語がうまく噛み合っていないのが残念。完全にハンナの視点にしてしまえばユニークなホロコーストものになったと思うが、そこに徹しきれず中途半端になってしまった。

(原題:Mi ricordo Anna Frank)

Tweet
4月公開予定 有楽町スバル座
配給:ゴー・シネマ 宣伝:アルシネテラン
2009年|1時間39分|イタリア|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.gocinema.jp/anne/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:もうひとつの『アンネの日記』
ホームページ
ホームページへ