アフロ田中

2012/01/24 松竹試写室
同名の人気コミックシリーズを豪華キャストで映画化。
松田翔太が意外な適役だった。by K. Hattori

Afurotanaka  ビッグコミックスピリッツで連載されている「アフロ田中」シリーズを、松田翔太主演で実写映画化した爆笑青春コメディ映画。高校を中退して東京に出てきた主人公の田中は、高校時代の友人から結婚式の招待状を受け取って大慌て。じつは高校時代に田中たち悪友グループは、「この中の誰かが結婚する時は、それぞれが付き合っている彼女を連れて行って紹介する」という固い約束を交わしていたのだ。だが田中に彼女はいない。結婚式までに彼女を作りたいが、その見通しもない。これは友人たちに素直に謝り、彼女がいないと告白するしかない……と思って帰郷してみたものの、なんと悪友グループのメンバーには自分以外全員彼女ができているのだ。「彼女がいない」と言いそびれて東京に戻った田中は、慣れない合コンに参加するなどして彼女を作ろうとするが上手くいかない。そんな時、アパートの隣の部屋に引っ越してきた若い美女が、なぜか田中に胸をときめかせていた。ひょんなきっかけから、ふたりはデートをすることになるのだが……。

 主人公の田中広を演じている松田翔太が、見事なはじけっぷりでこれまでの二枚目イメージを突き破った。隣室の美女、加藤亜矢役の佐々木希は相変わらず演技が少し固くてギクシャクしているのだが、そのぎこちないところが役柄には合っていて面白い効果を上げている。アフロヘアの松田翔太と場に不釣り合いな佐々木希が並んで立っているだけで、このカップルの醸し出す奇妙なおかしさが伝わってくる。しかしこの映画の主役はあくまでも松田翔太。制御不可能な煩悩と全身からにじみ出る童貞臭を増幅するのが、悪友役の堤下敦(インパルス)、田中圭、遠藤要、駒木根隆介たち。さらに田中の勤める会社の同僚役で、吹越満、皆川猿時、リリー・フランキーらが脱力しきった大人の存在感を発揮。他にもあれこれと、細かなキャスティングの妙技で笑わせてくれる。

 映画にはテーマだのメッセージだのと言ったこれといってないわけだが、あえて言うなら「若気の至り」のおかしさだろうか。若い頃は人生経験がない癖にあれこれと知識で頭でっかちになり、自分の考える「普通の常識」と実際の「世間様」のギャップがわからない。肥大した自意識から生まれるさまざまなコンプレックスや、世間の常識や大人たちに対する根拠のない蔑視、自分の思い込みの絶対視。こうしたことが恐いもの知らずの若者らしい大胆な行動を生み出しもすれば、独りよがりの空回りとその先の自滅を生み出しもする。主人公の田中は困った奴だが、この困った感じにはこの年代を経過してきた男なら誰もで多少の共感を覚えるのではないだろうか。

 基本的には正直なのだがプライドだけは人一倍高く、きれいな女性に惚れては振られるというヒーローがかつて日本映画界には存在した。それは『男はつらいよ』の寅さんだ。この『アフロ田中』もぜひ続編を作ってシリーズ化してほしい。

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2月18日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ショウゲート 宣伝:スキップ、プレシディオ、ヨアケ
2012年|1時間54分|日本|カラー|ビスタサイズ|DTSステレオ
関連ホームページ:http://afrotanaka-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
主題歌CD:夜を越えて(鶴)
原作:アフロ田中シリーズ
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