ゾンビ・アス

2011/12/14 京橋テアトル試写室
井口昇監督のスカトロ・スプラッタ映画は観るだけでクサイ。
オナラ、オナラ、ウンチ、ウンチ、オナラ。by K. Hattori

Zombieass  女子高生の恵にとって、学校内でのイジメを苦に自殺した妹を助けられなかったことは大きな心の傷になっていた。そんな彼女を心配して先輩の亜矢がキャンプに誘ってくれるが、彼女の恋人タケは女にだらしがなく、同行したモデル志望の真希に言い寄られてデレデレしている。じつはこのキャンプ、真希がダイエット用サナダムシを入手するという目的もあったのだ。捕獲したマスの体内から出てきたのは図鑑にも載っていない新種の寄生虫だったが、真希は躊躇なくそれを飲み込んだ。同じ頃、森の中で恵にちょっかいを出そうとしたタケは、謎の男にからまれて指を噛み切られる。恵の回し蹴りで相手の男は倒されるが、停めていた車を盗まれて一行は山の中に置き去り。地図を便りに近くの村にたどり着く頃、真希は猛烈な便意に襲われて便所に駆け込むのだが……。

 奇才井口昇監督の新作は、宇宙からやって来た寄生生物が人間を操るという侵略SF風のスプラッタ・アクション映画。しかしこれは物語を成り立たせるための言い訳めいた梗概に過ぎず、中身は全編オナラとウンチとゲロとにまみれたスカトロ活劇になっている。この映画の中では血糊もたっぷりと飛び散る。寄生生物に体を乗っ取られてゾンビになった人間たちの頭を吹き飛ばし、体を切断するといった残虐シーンもあるのだが、これは映画の中のアクセント。それ以上に多いのは、大量に飛び散る糞便となりやむことなき放屁だ。映画を通してニオイを伝えるのは難しいのだが、ここまで徹底してウンコとオナラを連発されると、画面のこちら側にまでそのニオイが伝わってくるような気がする。

 小規模な映画の割には登場人物が多く、そうした点では未整理な部分もあるのかなぁ……という脚本だ。人物が絡まり合いながらドラマチックな物語を作っていくのではなく、人物がいくつかのエピソードを作って画面から去って行くというキャラクターの使い捨てが行われている。これはトランプでババ抜きをしている時、手もとで数字が揃ったカードから次々捨てていくようなもの。手札になっているキャラクターに見合う事件が起きれば、そこですぐに手札を切り出して手持ちのカードを減らしていく。そういう意味ではわかりやすくシンプルな構成で(『バトル・ロワイアル』が同じ構成だ)、暴力と血糊と糞便の勢いで突っ走っていくこの映画には相応しいのかもしれない。ヒロインが最後にラスボスと対決するシーンには、他に邪魔する者が誰もいない安心感から、ある種の清々しささえ感じてしまうのだ。

 映画は全編笑いに満ちていて、とても楽しく見ることができた。オナラやウンコで喜んでいるのはまるで幼稚な趣味だと思うが、こういう幼稚さは人間誰しも持ち合わせているに違いない。誰にでもお勧めするわけにはいかないが、何かの巡り合わせで観ることになれば、それなりに楽しめる映画であることは請け合うことができる。

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2月25日公開予定 シネマート新宿
配給:日活 宣伝:DROP.
2011年|1時間25分|日本|カラー|16:9|DTSステレオ
関連ホームページ:http://zombieass.jp/
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関連DVD:井口昇監督
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