アニマル・キングダム

2011/12/07 松竹試写室
犯罪一家に引き取られた高校生の冷酷非情なサバイバル。
祖母役のJ・ウィーヴァーがすごい迫力。by K. Hattori

Animal_kingdom  オーストラリアのメルボルン。ヘロイン中毒で母を亡くした17歳のジョシュア(愛称:ジェイ)は、長く疎遠なまま過ごした祖母ジャニーンの家に引き取られることになった。ジャニーンにはジェイの母の他に3人の息子がいて、全員が強盗や麻薬取引などの違法行為で生計を立てている。家族はジェイを大歓迎するが、こうした環境下でジェイが普通の高校生のまま犯罪と無関係に暮らすことができるはずはない。最初は緊張していたジェイも、犯罪一家での暮らしにすっかり慣れてしまった。そんな中で、一家と家族ぐるみの付き合いをしていた強盗仲間のバズが警官に射殺され、一家は即座に警察への復讐を誓う。一家の長男ポープは、ジェイに車の調達を命じる。ジェイが首尾よく盗んできた車をおとりにして、おじたちはパトロール警官2名を殺害する。しかしこれは、一家が破滅へと向かう終わりの始まりだった。

 昨年のオーストラリア・アカデミー賞で16部門にノミネートされて10部門で受賞し、アメリカでもアカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされたオーストラリア製のサスペンス・スリラー映画。映画序盤で犯罪一家の暮らしぶりを、ある意味ではほのぼのムードで描いていくが、それがバズ殺害で一気に緊迫し、一家が警察に逮捕されることでさらに緊迫感が増して行く。ここから先は、ほのぼのムードは消滅。家族や肉親同士の絆といった甘っちょろい表向きの顔ははぎ取られ、犯罪一家の冷酷な素顔が暴き出されていく。警察の取り締まりにも、血の結束で秘密を守り通してきた家族。しかしジェイが加わった今は違う。

 ジェイは警察の取り調べに耐えられるのか? やつはしょせん高校生のガキだ。家族のルールもまだよく知っちゃいない、最近家族の輪にに加わったばかりのよそ者じゃないか。子供同士の会話で、あいつがガールフレンドにべらべら何を話しているかわかったもんじゃない。ガキは自分のしでかした悪事を、彼女にひけらかして大物ぶってみせるものだ。ジェイは危ない。あいつが警察で何か一言でも漏らせば、それがきっかけで一家全員が破滅してしまう……。

 この映画の面白いところは、普通の映画なら当然クライマックスなり決着になっているところが、そうならずに話が続いていくことだ。犯罪一家の友人バズが殺されても話は終わらない。一家の中からついに逮捕者が出ても、話は終わらない。そして話が先へ先へと延長されるに従って、家族の中にある隠されていた意外な顔が次々に明らかにされる。映画の中盤まで存在感の薄かった祖母ジャニーンだが、演じているジャッキー・ウィーヴァーがなぜ数々の映画賞候補になったのかが映画の終盤で明らかになる。これはすごい迫力だった。本作がデビュー作だというジェイ役のジェームズ・フレッシュヴィルも、彼女との対決を通してたくましい男の顔に変貌して行くのだ。

(原題:Animal Kingdom)

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1月21日公開予定 TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館
配給:トランスフォーマー
2010年|1時間53分|オーストラリア|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.ak-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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