映画ドラえもん

新・のび太と鉄人兵団
〜はばたけ 天使たち〜

2011/03/06 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン2)
謎の美少女リルルはロボット帝国メカトピアのスパイだった。
1986年の劇場版を新キャストでリメイク。by K. Hattori

Nobitatetsujin  2005年に声優陣が一新されたアニメ「ドラえもん」の、新声優版としては6作目の劇場版。映画版ドラえもんは1980年の「のび太の恐竜」から2004年の「のび太のワンニャン時空伝」まで25本が作られたが、新シリーズは昨年まで5本作られた内3本が旧シリーズのリメイク作品だった。今回の映画も1986年の「のび太と鉄人兵団」のリメイクだ。オリジナル版を観ていないのでサイトでいろいろ調べてみたが、ストーリーはほとんどオリジナルを忠実になぞっているようだ。

 物語の主人公はのび太やドラえもんなのだが、事実上物語を引っ張っているのは、のび太たちの前に現れた不思議な美少女リルル。じつは彼女はロボット帝国メカトピアが進める人類奴隷化計画の先兵として、巨大ロボットのジュドと共に地球に送り込まれたロボットスパイだった。ところが北極に前線基地を作るため運び込まれたジュドがのび太の手に渡ったことから(のび太はこれをザンダクロスと命名)、リルルとのび太たちとの交流が始まる。やがてリルルの正体と目的を知って衝撃を受けるのび太たちだが、それでも彼女を殺してしまうことができない。リルルはそんなのび太たちを不思議に思う。傷ついたリルルに手当をしながら、のび太たちはメカトピア軍団を鏡面世界におびき寄せ閉じ込めることを考えるのだが……。

 オリジナル版がどうだったのかはよくわからないが、映画はキリスト教的な意匠があちこちにちりばめられた物語になっている。メカトピアの始祖が「アムとイム」という一組のロボットだったというのは、もちろんエデンの園の「アダムとイブ」のもじり。リルルやピッポ(「おはなしボックス」と「ほんやくコンニャク」で姿を変えた、ザンダクロスの本来の頭脳ジュド)が歌う「一つ目は愛〜、二つ目は願い〜、三つ目は想い〜」という曲は、新約聖書のコリントの信徒への手紙一にある有名な愛の賛歌のバリエーション。パウロが「信仰と希望と愛」と言ったものを、「愛と願いと想い」に言い換えている。リルルは人間を救うために自らが犠牲となって命を捨て、映画の最後に復活する。この復活の姿がのび太には一瞬の影か幻のようにしか見えないのだが、それでものび太はリルルとピッポの復活を信じる。ちょうどイエスの弟子たちが、イエスの復活を信じたように。

 原作者である藤子・F・不二雄の思いはどこにあったのか? 僕はその姿を、映画の最後に出てくる博士の中に見てしまう。彼は自分の作ったロボットが人類に危害を加えると知っても、ロボットを破壊することなくプログラムを書き換える。何が何でも何かを作りたい、自分の命と引き替えにでも何か「良いもの」を残したいという願う作り手の業(ごう)のようなものだ。原作者は世を去ったが「ドラえもん」は残る。博士が死んでも新しいメカトピアは残る。劇中の博士は、藤子・F・不二雄の亡霊なのだ。

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3月5日公開 TOHOシネマズ 日劇
配給:東宝
2011年|1時間48分|日本|カラー|ビスタビジョン|ドルビーデジタルサラウンドEX
関連ホームページ:http://doraeiga.com/2011/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜
関連DVD:映画ドラえもん のび太と鉄人兵団(1986)
主題歌CD:友達の唄(BUMP OF CHICKEN)
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