ザ・ホークス

ハワード・ヒューズを売った男

2011/02/18 ショウゲート試写室
ハワード・ヒューズの偽自伝を書いた詐欺師たちの物語。
へんに小さくまとまってしまった。by K. Hattori

Hoax  2004年にマーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオのコンビで製作された『アビエイター』は、アメリカの大富豪ハワード・ヒューズの生涯を、主として彼のハリウッド時代を中心に描いた伝記映画だった。『アビエイター』はヒューズの精神疾患が悪化して世捨て人のような暮らしになったところで終わってしまうのだが、この後も数十年間ヒューズの生涯は続く。ハワード・ヒューズは亡くなる1976年まで、世界一の大富豪であり、同時に世界一の変人として有名な人物だった。

 1971年、アメリカの大手出版社マグロウヒル社は、ハワード・ヒューズの自伝を出版すると発表した。ヒューズと接触して自伝執筆の依頼を受けたのは、同社と契約中の作家クリフォード・アーヴィングだった。マグロウヒル社はヒューズに100万ドル、アーヴィングに10万ドルという破格の契約金を払った。この話は当然最初から本当かどうかが疑われたのだが、マグロウヒル側は専門の筆跡鑑定人や過去にヒューズと接触のあったジャーナリストにも意見を求めた上で、出版計画にゴーサインを出す。その後この話は変人ヒューズの気まぐれで二転三転するのだが、最終的に出版社に届けられた原稿は全員にとって満足の行くものだった。これは大ベストセラー間違いなし。出版権は全世界に売れ、印刷機はフル稼働。大々的な出版記念パーティーも開かれ、あとは出荷を待つばかりとなったのだが……。じつはこの話、すべてが真っ赤なウソ。出版社はアーヴィングに一杯食わされたのだ。

 本作はこの事件を起こした張本人であるクリフォード・アーヴィングの手記「ザ・ホークス/世界を騙した世紀の詐欺事件」の映画化。主人公のアーヴィングを演じるのはリチャード・ギア。監督はラッセ・ハルストレム。(公開順が逆になったが、このコンビは本作の後に『HACHI 約束の犬』(日本映画『ハチ公物語』のリメイク)を撮っている。)共演にはアルフレッド・モリーナ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ホープ・デイヴィス、ジュリー・デルピー、スタンリー・トゥッチと豪華。映画のネタとして面白そうだし、スタッフもキャストも一流なのだが、どういうわけか映画はさほど面白くなっていない。

 物語を要約すれば、「無名の作家が大手出版社をまんまと騙して大金をせしめようとする話」なのだ。主人公たちを頭脳と度胸を持ち合わせた筋金入りの詐欺師たちにしてしまえば、これは相当に面白い映画になったはず。しかし映画はここに「コンゲーム」ではなく「ニクソン時代」というテーマを見つけて、サイドストーリーであるはずのニクソン献金問題などをほじくりはじめる。結局はこの穴に足を取られて、映画全体が小さくなってしまったのではないだろうか。詐欺話はホラ話。壮大なホラ話の楽しさが、些末なところでブレーキをかけられてしまった。

(原題:The Hoax)

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G.W.公開予定 シアターN渋谷
配給:ファインフィルムズ
2006年|1時間56分|アメリカ|カラー|1:1.85|SDDS、ドルビーデジタル、DTS
関連ホームページ:http://www.finefilms.co.jp/hoax/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男
原作:ザ・ホークス 世界を騙した世紀の詐欺事件
関連書籍:捏造の世界史 (祥伝社黄金文庫)
関連DVD:ラッセ・ハルストレム監督
関連DVD:リチャード・ギア
関連DVD:アルフレッド・モリーナ
関連DVD:マーシャ・ゲイ・ハーデン
関連DVD:ホープ・デイヴィス
関連DVD:ジュリー・デルピー
関連DVD:スタンリー・トゥッチ
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