アンストッパブル

2011/01/12 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン1)
危険物満載で市街地に向けて暴走する貨物列車を止めろ。
骨太の脚本と演出のけれんが見事に一致。by K. Hattori

Unstoppable_2  ペンシルバニア州ウィルキンソンの操車場で、運転士の些細な不注意によるミスから重大な事故が発生した。自動ブレーキの利かなくなった貨物列車777号が、運転士を取り残したまま暴走を始めたのだ。最初は惰性運行で数キロ以内に止まると思われていた列車は、みるみるうちにスピードを上げて行く。このまま市街地に突入すれば、急カーブで列車は脱線転覆。ディーゼル燃料と貨車に積んだ致死性の化学薬品が周囲にばらまかれて、鉄道事故としては史上最悪の事態を招くことは間違いない。だが猛スピードで疾走する機関車には、どんな手段を使っても近づくことができない。同じ頃、州内の別の操車場を出発した貨物列車1206号に乗り込んだふたりの運転士は、自分たちと同じ線路の正面から猛スピードで無人暴走列車が突進していることを知らされる。このままでは正面衝突で大惨事となる。1206号はすぐに列車を待避線に避難させようとするのだが、そのための時間はあまり残されていなかった……。

 暴走する列車を止めるという、ただそれだけのシンプルな物語。2001年5月に起きた実際の列車暴走事故を下敷きにしているそうだが、映画冒頭に「事実に触発された」と断り書きがあるように完全な実話というわけではない。しかし事故が起きたきっかけや、同一線路を走っていた別の機関車が時速100キロで暴走列車に連結し、列車を後ろから引っ張ることで減速させたことなどは事実に基づいている。映画として膨らませてあるのは、登場人物の設定などだろう。この映画は人間ドラマではなく、主役は暴走する機関車そのものにある。ならばその周囲にある人間関係などは、映画的な脚色をするのも十分にありだろう。

 人間側はこの事件においていわば狂言回しみたいなものだが、その中心になるのは勤続28年のベテラン運転士と、仕事を始めて4ヶ月という新入りの車掌。年季の入ったベテランの中年男と、生意気だが経験の少ない若い新人。これが黒人と白人になっているのがハリウッド流で、これまでも刑事ドラマなどでよく見かけたパターンだ。例えば『セブン』のモーガン・フリーマンとブラッド・ピットや、『トレーニングデイ』のデンゼル・ワシントンとイーサン・ホーク。この映画ではそれが、ベテランのデンゼル・ワシントンと新人のクリス・パインになっているわけだ。よくあるパターンで新鮮味はないが、よくあるパターンには長年鍛えられた足腰の強さがある。この映画でもそうした強みが十分に発揮されていると思う。

 上映時間1時間39分は最近の映画にしてはコンパクト。この中に見せ場がギュギュッと凝縮されている。暴走する列車と、それを追いかける男たちの物語が合流してから、一気呵成にラストまで突っ走るスピード感が素晴らしい! 今年は正月から、じつに面白い映画を観たと大満足の1本でありました。

(原題:Unstoppable)

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1月7日公開 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス
2010年|1時間39分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/unstoppable/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アンストッパブル
サントラCD:Unstoppable
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