大韓民国1%

2011/01/07 シネマート銀座試写室
韓国軍特殊部隊に初配属された若い女性士官の奮闘記。
もう少し細部の厚みがほしい。by K. Hattori

Daikanminkoku  韓国軍の中でもわずか1%の精鋭だけが配備されている海兵隊特殊捜索隊に、初の女性下士官として配属された主人公イ・ユミが、同僚たちの好奇と嫉妬の目にさらされながらも奮闘する姿を描く軍隊映画。軍隊映画としては定番のモチーフが詰め込まれていて楽しめるのだが、その分どうしても新鮮味に欠けるのが残念。「軍の特殊部隊に女性下士官が配属されたらどうなるか?」というシミュレーションとしても、細部の考証が行き届いているとは思えない。男所帯に女が単身飛び込めば、そこにはありとあらゆる軋轢や衝突が待ち構えているはず。それらを丁寧に描いていくだけで映画としては十分に面白いものになるように思うのだが、残念ながらこの映画はそれをしていない。

 観客ののぞき見的な好奇心を満たすものとしてごく簡単な例を挙げてみても、例えばトイレやシャワーや入浴はどうするのか、部屋の割り振りはどうしているのか、生理中の対応はどうするのかなど、この映画に描かれていない(描こうとしない)事柄は山のようにある。映画はこうした「女性ならではの諸問題」を描いていないため、結果としては主人公の持つ「女性初の特殊偵察隊下士官」という属性がぼやけて、単なる「新米下士官」の苦労話の範囲で物語が完結してしまうのだ。この映画の主人公を男性にしても、この映画はそっくりそのまま成立してしまう。でもこの程度の内容であれば、むしろ主人公を素直に男性にして終盤を盛大に「男らしい」盛り上げをした方が、シンプルで力強い作品になったかもしれない。

 物語の前半はコミカルな調子。隊内落ちこぼれチームのリーダーになった主人公が、いかにしてこのチームを立て直して行くか。小さな成功体験を積み重ねて調子を上げてきたチームが、主人公を妬むライバルチームの脅迫じみた圧力に屈して瓦解してしまうのか……という話。後半は「訓練のつもりが実戦に」という『トップガン』的なシチュエーションに突入。ここではさらに「訓練中に紛失した実弾はどこに消えたのか?」といった話も絡んで、ミステリー&サスペンス&アクションが三つ編みになって行く。しかし僕が思うに、これは前半も後半も中途半端だ。こうした映画では「主人公の失敗」が必ず物語のキーポイントに盛り込まれているものだが、この映画にはそれがない。主人公はいつも正しく、考えや行動を改めるべきは周囲の人たちだけなのだ。これが結果としては、主人公のキャラクターを薄っぺらで貧相なものにしてしまった。物語の中でキャラクターを光らせるのは「欠点」だ。この映画では完全無欠な主人公より、過去にトラウマを持つカン中士や、欠点だらけで卑劣なワン下士(演じているイム・ウォンヒは若い頃の勝新太郎にそっくりで愛嬌たっぷり!)だったりするのではないだろうか。

 なお主演のイ・アイは現在日大芸術学部映画学科に在学中で、日本での活動も視野に入れているとのこと。

(原題:大韓民国1%)

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3月5日公開予定 シネマート新宿、シネマート六本木
配給:アルシネテラン
2010年|1時間45分|韓国|カラー|シネマスコープ|SRD
関連ホームページ:http://www.alcine-terran.com/rok/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:大韓民国1%
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