モンガに散る

2010/11/24 シネマート銀座
高校の不良少年仲間がやくざ組織の中で分裂してゆく悲劇。
モンク役のイーサン・ルアンが最高。by K. Hattori

Monga  1986年の台湾。台北の中心部にある古い歓楽街モンガの高校に、転校生のモスキートがやってくる。母子家庭育ちで子供の頃から転校を繰り返していたモスキートは、どこに行ってもイジメのターゲット。転校してきた新しい学校でも早速クラスの不良ドッグにたかられるが、モスキートは卑屈になることなくこれを拒否。この様子を見ていたのが、ドラゴン率いる校内の番長グループだった。彼らは大勢で寄ってたかってイジメに加わるドッグたちを苦々しく思い、彼らに毅然と立ち向かうモスキートの反抗心を好ましく思う。「俺たちと友達になろう」という一言で、ドラゴンたちの仲間になったモスキート。初めての友達、初めての仲間、極道と呼ばれる街の侠客の仲間入り。モスキートはドラゴンたちと義兄弟の契りを交わし、これから先も常に仲間のために戦おうと決意するのだが……。

 高校の不良少年仲間たちがやくざ組織に入り、そこで傷つきバラバラに引き離されていくという物語。主人公が所属する不良グループのメンバーたちが、じつに個性的で魅力たっぷりなのがいい。リーダーのドラゴンは地元民からも尊敬されているゲタ親分の息子で、子供の頃から「お坊ちゃん」として育てられてきた男。自信たっぷりで押し出しがいいし、育ちの良さから貴公子のような風格がある。だがこのグループを実質的にまとめているのは、ドラゴンの幼なじみでもある仏具屋の息子モンク。勉強でも学校一番の優等生だが、喧嘩も強くて負けなし。それでいながら常にドラゴンを自分の前に立てて、自分は一歩も二歩も下がる有能な副将であり参謀。白ザルは身体が小さいが、度胸と腕っ節では誰にも負けない火の玉のような男。アベイはお調子者で気弱なことも言うが、喧嘩がとなれば相手を煙に巻きながら最後まで戦い続ける。親しい仲間のいなかったモスキートは彼らに出会うことで、はじめて仲間や家族の温かさを知る。喧嘩に明け暮れていても、無邪気な少年時代の親しい仲間たちだ。だがその無垢な時代は、やがて終わってしまう……。

 映画の構成としては前半が不良少年編、後半が組織抗争編といった内容になっていて、前半で固い結束を誓った主人公たちは、後半の組織間抗争の中で散り散りになっていく。ここに主人公と若い娼婦の淡い恋や、モンクとドラゴンの間にある感情的なすれ違いといった小さなエピソードが並行して、最後は胸を締め付けるようなクライマックスの対決へとつながっていく。僕はこの終盤を観て、東映任侠映画の傑作『博奕打ち・総長賭博』を連想した。主人公の鶴田浩二が、敬愛する兄貴分である若山富三郎を刺さねばならない悲劇。『総長賭博』には金子信雄という悪党がいたが、『モンガに散る』にはそうしたわかりやすい黒幕がいないところがむしろリアルだ。組織の近代化と若返り要請は時代の流れだが、それが極道としての筋を通す生き方と折り合えないだけなのだ。

(英題:Monga)

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12月18日公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:ブロードメディア・スタジオ 宣伝:フリーマン・オフィス
2010年|2時間21分|台湾|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.monga-chiru.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:モンガに散る
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