プチ・ニコラ

2010/08/26 ショウゲート試写室
子供たちに振り回される大人の姿についクスクス笑い。
フランスの人気絵本を実写映画化。by K. Hattori

Putinikora  フランス生まれの人気児童書「プチ・ニコラ」シリーズを、『モリエール/恋こそ喜劇』のローラン・ティラール監督が実写映画化。原作は世界中で翻訳されて、世代を超えて愛されている。日本では1970年代に原作の一部が翻訳出版された後、1990年代に原作「プチ・ニコラ」5冊が翻訳され、数年前には続編「かえってきたプチ・ニコラ」5冊が翻訳されている。そんなわけで、僕はこの原作をまったく知らなかったのだが、知っている人にとっては待ち遠しかった映画化なのかもしれない。なおフランスではこの実写版と同時期に、新しいアニメシリーズも製作されてテレビ放送されているようだ。

 なお原作者のひとりルネ・ゴシニは、この作品以外にも人気マンガ「アステリックス」の原作者として知られている。「アステリックス」はジェラール・ドパルデュー主演で3本の実写映画が作られたが、日本ではそのうち2本目の『ミッション・クレオパトラ』しか公開されなかったのが残念。3本目はアラン・ドロンが久しぶりに映画出演するなど、話題の多い作品だったんだけど……。(ちなみに僕は1本目の『アステリクスとオベリスク』を映画祭で観ているが、これも腹筋がつりそうになるほど笑えるドタバタコメディだった。)今回の『プチ・ニコラ』では子供たちが「怪力の出るニセ薬」を売るシーンが出てくるが、そのアイデアのもとになった漫画本が「アステリックス」。事前にそんなことを知っていると、このシーンがより楽しめるかもしれない。

 物語の舞台は1960年代の古き良きフランス。小学生のニコラと個性豊かなクラスメートたちが、周囲の大人たちをきりきり舞いさせてゆくドタバタコメディだ。子供たちは大人たちを困らせようとしているわけではないのだが、大人たちの行動に対する子供たちの無邪気な反応が、結果としては大人たち自身に跳ね返っていくというエピソードが多い。原作は日本版で1話数ページという短編連作なので、映画では全体を包括する大きな物語を設定し、その中に小さなエピソードを散りばめる構成になっている。

 登場する子役たちは主演のマキシム・ゴダール以下、この映画のためにオーディションで集められた新人が多い。それを支えるのが周辺でサポートするベテラン俳優たち。ママ役のヴァレリー・ルメルシェや、パパ役のカド・メラッド、先生役のサンドリーヌ・キベルランや、社長役のダニエル・プレヴォストなどはフランス映画を観ている人にはお馴染みの顔ぶれ。誰もが知る大スターではなくても、人気と実力を兼ね備えた芸達者ぞろいだ。こうした大人たちが、子供たちに混じって時として子供以上に子供じみた振る舞いをするのがこの映画の笑いを生み出す。「子供ってカワイイね」だけではなく、観ている大人たちも「大人ってコドモだね」と我と我が身を振り返ってニヤリと笑える映画なのだ。ぜひ子供と一緒に観たい映画だけど、吹替版はあるかな?

(原題:Le petit Nicolas)

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10月公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:コムストック・グループ、フェイス・トゥ・フェイス
2009年|1時間31分|フランス|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.petitnicolas.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:プチ・ニコラ
原作:プチ・ニコラ
原作洋書:Le petit Nicolas
関連DVD:ローラン・ティラール監督
関連DVD:マキシム・ゴダール
関連DVD:ヴァレリー・ルメルシェ
関連DVD:カド・メラッド
関連DVD:サンドリーヌ・キベルラン
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