メッセージ

そして、愛が残る

2010/08/13 京橋テアトル試写室
妻と別居中の若い弁護士の前に「死を予見する男」が現れる。
悪い話じゃないけど演出プランに難あり。by K. Hattori

Afterwards  ニューヨークの大手法律事務所に勤める弁護士ネイサンのもとに、セントルイス病院医局長のジョセフ・ケイという男が訪ねてくる。それは仕事に関わる話ではなく、彼に対してきわめてプライベートなメッセージを伝えるための訪問だった。彼には死が近い人間がわかる。人が最後に残された時間を親しい人たちと過ごし、自分自身の死と向き合える時間を作るのが彼のもうひとつの仕事だというのだ。彼の言葉を疑っていたネイサンだったが、いくつかの証拠を見せられて彼を信用せざるを得なくなる。だが彼が自分のところに来たということは、自分にも残された時間がわずかしかないということか? ネイサンが残りの時間を過ごしたいと願ったのは、今は別れて暮らす妻と娘。ある出来事をきっかけに離ればなれになってしまった家族だが、ネイサンにとって最後の望みは、ふたりと和解し最後の時間を一緒に過ごすこと。ネイサンはケイと共に、ふたりが暮らすニューメキシコに向かう。

 フランスの人気小説家ギョーム・ミュッソの小説を、ジル・ブルドスが脚色・監督したファンタジー要素の強いヒューマンドラマ。しかし物語の中にあるスーパー・ナチュラルな要素は弱められ、死を前にした主人公の葛藤が物語の中心になっている。しかしこの素材、普通に考えれば序盤から中盤まではもっとスーパー・ナチュラル要素を前に出して、死を予知する特殊能力者と主人公の対立や、予告された死を回避できるか否かというサスペンスで物語を引っ張っていった方がよかったように思う。映画は冒頭から少女が湖で溺れかけ、少年が車にはね飛ばされるというショッキングなシーンから始まるし、その後も飛行機が墜落し(フライトレコーダーの音声だけでも十分に衝撃的)、青年が地下鉄構内でピストル自殺するなど、さまざまな形の死が次々に登場する。しかし映画はそうした死の衝撃を、なぜかソフトに和らげてしまうのだ。これは監督の演出プランの失敗のように思える。

 物語の主要な登場人物は、弁護士のネイサン、人の死期が見える特殊能力者ケイ、そしてネイサンの別れた妻クレアぐらいだろうか。映画のクライマックスではネイサンとクレアの和解が物語の中心になるが、その直前まではネイサンとケイの葛藤が物語をリードしてゆく。序盤では「ケイは何者なのか?」「何の目的があってネイサンに近づいたのか?」というミステリーが物語を牽引する。その後は「ケイの言っていることは本当なのか?」「ケイの予言を回避することはできないのか?」というサスペンスが物語の中心命題となる。この後になってはじめて、ネイサンはケイが自分を訪ねてきた目的が「自分自身に死を告げるメッセージ」だと悟るわけだが、映画を観ているとこの瞬間までネイサンがこの状況に気づかないことが不自然に思えるのだ。映画前半のミステリーとサスペンスをもっと強くすれば、こうした事態は防げただろうに。

(原題:Afterwards)

9月25日公開予定 TOHOシネマズ シャンテ
配給・宣伝:日活 宣伝協力:アルシネテラン
2008年|1時間47分|ドイツ、フランス、カナダ|カラー|シネマスコープ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.message-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:メッセージ そして、愛が残る
DVD:Afterwards [Import]
サントラCD:Afterwards/Et Apres
原作:メッセージ そして、愛が残る
関連DVD:ジル・ブルドス監督
関連DVD:ロマン・デュリス
関連DVD:ジョン・マルコヴィッチ
関連DVD:エヴァンジェリン・リリー
ホームページ
ホームページへ