リトル・ランボーズ

2010/07/28 映画美学校試写室
映画『ランボー』にあこがれて映画を撮り始めた小学生たち。
アイデアは面白いがイマイチはじけない。by K. Hattori

Sonoframbow  小学5年生のウィルは、保守的で厳格なキリスト教家庭の教育方針によって、音楽や映画やテレビなどの娯楽をすべて禁じられている。学校でテレビを使った視聴覚教材が授業に用いられる際は、その間だけ廊下に出なければならないほどだ。だが同じ廊下には、ウィルとはまったく違う理由で教室から追い出されている生徒がいた。不良少年のリーは何かと問題を起こしては、廊下に追い出され、校長室に呼ばれるという札付きの生徒。リーと親しくなったウィルは、彼の家で偶然シルベスター・スタローン主演映画『ランボー』のビデオを見て衝撃を受ける。ウィルとリーは家庭用ビデオカメラを使って、『ランボーの息子』というアクション超大作映画を自主製作し始める。同じ頃、交換留学で学校にやってきたフランス人の少年ディディエは、ウィルが映画を撮っていると知って自分を主演俳優にするよう売り込んでくる。学校内で「映画監督」として名士扱いされるようになったウィルは、カメラの持ち主であるリーを無視して映画製作を進めるのだが……。

 映画の時代背景は映画『ランボー』が全世界で公開されてヒットした1982年だが、結果としてこれは1980年代ノスタルジーのような作品になっている。ばかでかいホームビデオ。ばかでかい携帯電話。パンクファッション。匂いのする消しゴム。口の中ではじけるキャンディーと炭酸飲料の一気飲み。当時映画に登場する子供たちと同じ年頃だった人たちにとっては、国柄は違えど結構懐かしいアイテムが揃っているのではないだろうか。何より懐かしいのは『ランボー』の1作目だが、この映画自体はテレビで何度も繰り返し放送されていることもあって時代性は希薄かもしれない。イギリスの小学生たちの話ということもあって『小さな恋のメロディ』に相通じる雰囲気もなくはないのだが、ここにはビージーズの音楽もなければ恋愛がらみの話も出てこない。

 映画ファンならそれだけで何割か好意的な評価をしてしまう「映画を作る映画」だが、僕はこの映画にあまりノレなかった。それはこの作品が「映画を作る苦労話」より、少年同士の友情や家族の物語に大きな比重をかけているからだと思う。映画の話は、この映画の中ではほんの付け足しに過ぎないのではないだろうか。だとすれば、映画作りのきっかけになった『ランボー』も付け足しだ。かといって映画作りのエピソード以外の話がものすごく面白いというわけでもないのが、この映画の少し困ったところ。ウィルの家庭にせよ、リーの家庭にせよ、掘り下げていけばまだまだ描かなければならないエピソードは出てきそうだし、ウィルとリーの友情についてもそれは同じだ。でもこの映画はそれらをさらりと流してしまう。「映画を作る映画」としても、「小学生の男の子同士の友情の物語」としても、「小学生の男のこと家族の物語」としても、どれも中途半端になってしまった。

(原題:Son of Rambow)

10月下旬公開予定 渋谷シネクイントほか全国ロードショー
配給:スタイルジャム 協力:ハピネット
2007年|1時間34分|英国、フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://rambows.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:リトル・ランボーズ
サントラCD:Son of Rambow
DVD (Amazon.com):Son of Rambow
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