ゴスロリ処刑人

2010/07/16 ポニーキャニオン(2F)
ゴスロリファッションのヒロインが母の仇を血祭りに。
アクションは高水準だが脚本がダメ。by K. Hattori

Gothloli  近未来の東京。平和に暮らしていたユキの家庭は、突然襲ってきた5人組の手によってメチャクチャに破壊された。一家団欒は一瞬にして血まみれの惨劇に変わる。母カヤコは惨殺され、父の次郎は一生癒されぬ傷を負い、ユキの心も深く傷つけられた。目の前で母を殺され、父を傷つけられたユキは、生き残った父と共に5人組への復讐を誓う。全身黒ずくめのゴスロリ処刑人として、5人組をひとりずつ血祭りに上げるのだ!

 「オシリーナ」の愛称で知られる秋山莉奈が、ハードなアクションに挑んだB級テイスト満載のスプラッター・アクション映画。多くのシーンはスタントマンによる吹替なのだが、本人が演じているシーンとの繋ぎが上手いので、吹替だとわかっていても結構見応えのあるシーンが続く。監督はスタントマン出身で、多くの作品(ほとんどB級のVシネみたいなもの)でアクション監督を手掛けている小原剛。今回の映画では監督の他に、編集とアクション総監督も兼務。香港映画やハリウッド映画にも見劣りしない、スピード感のあるアクションシーンを展開させている。

 ただしこの映画、お話しの方がまるでダメダメ。主人公が復讐のため5人組のメンバーと次々対決していくのだが、それがいわばアクションゲームの面クリアのように1回ずつ完結していて、ドラマとしての連続性がない。5人組が何のためにヒロインの家庭を襲ったのかも、最後まで明確には説明されていない。この5人組はどういう組織に属する、どういう人間たちなのか。ヒロインの両親はなぜ結婚したのか。ヒロインの父親はどういう経歴の人間なのか。こうしたことをくだくだしく説明するより、アクションを優先させてしまったということなのかもしれないが、映画におけるアクションはあくまでもドラマの延長にあるべきもの。アクションだけが突出して良くても、お話しがダメでは映画としての魅力がない。日本映画の父・牧野省三は、優れた映画の要素を「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」と言ったそうだが、これはそのまま映画における優先順位でもある。一番はスジ(筋=脚本)であり、ドウサ(動作=アクション)は後回しでいいのだ。少ない製作予算をやりくりするため、ドラマ部分よりアクションシーンを重視したという理由はわからぬでもないが、台詞の中に二言三言それらしい言葉を散りばめておくだけで、物語はずっと引き締まったはず。全部を説明せずとも、観ている者の想像力を刺激する手がかりだけがあればいい。

 だが『ゴスロリ処刑人』というタイトルは秀逸。牧野省三は優れたタイトルを考えた脚本家に、それだけでかなり高額なボーナスを手渡したそうだが、この映画のタイトルにも値千金の価値がある。このタイトルとゴスロリファッションの処刑人というアイデアだけ生かして、これはシリーズ化してもらいたい。同系統のコスチューム・ヒロインものなら、『スケバン刑事』というヒット作もあったぞ!

9月4日公開予定 シアターN渋谷にてレイトショー公開
配給:DHE 配給・宣伝協力:ユナイテッド エンタテインメント
2010年|1時間28分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.ponycanyon.co.jp/galp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ゴスロリ処刑人
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