仁寺洞(インサドン)スキャンダル

〜神の手を持つ男〜

2010/05/25 サンプルDVD
国宝級の絵画を復元する天才修復師と美術品闇ブローカーの対決。
途中の話はわかりにくいのだが幕切れは痛快。by K. Hattori

Insadong  韓国の首都ソウルの一角にあるインサドン(仁寺洞)地区は、骨董品店やギャラリーが数多く並ぶ地域として知られている。生き馬の目を抜くこの世界で目下飛ぶ鳥を落とす勢いなのは、女だてらにギャラリー・ヒムン(秘門)を経営するペ・テジン会長。彼女は京都で発見された韓国国宝級の絵画「碧眼図」を、ライバルたちを出し抜いていち早く買い付けることに成功した。保管状態が悪く崩壊寸前の「碧眼図」だが、上手く修復できれば莫大な利益が得られる。ペ会長は絵画修復の分野では天才的な腕を持ちながら、今はギャンブルで身を持ち崩している若き天才イ・ガンジュンを雇い入れ、「碧眼図」の復元作業に取りかかる。だがペ会長はギャラリー経営者という表の顔とは別に、韓国と日本の間で違法な美術品売買や贋作売買を繰り返す闇ブローカーという顔を持っていた。一方イ・ガンジュンも、ペ会長らに知られることなく盗品美術のオークションや絵画贋作組織などに接近。いったい彼の正体は何者で、その目的は何なのか? 彼はペ会長にとって敵なのか? それとも味方なのか?

 キム・レウォン扮する天才修復師イ・ガンジュンと、オム・ジョンファ演じる美術商の対決というのが物語の縦軸。金のため平然と違法行為に手を染める美術商は、映画に登場した瞬間から悪役だと一目瞭然。しかしそれと対決する修復師が単に善良な心優しい芸術家というわけではないのが、この映画のユニークなところだ。修復師と美術商の対立は、まるでキツネとタヌキの化かし合い。しかし美術商が海外の顧客や、周辺同業者や、警察などに睨みをきかせているうちに、修復師はまんまと美術商を出し抜いて自分自身の目的を達してしまう。つまりこの映画で描かれているのは「善と悪の戦い」ではない。悪党同士の争いなのだ。修復師の側には「復讐」という目的があって、その一点だけを見れば彼の側に大義名分があるようにも思えるのだが、ギャラリーの女経営者が闇ルートの美術品売買に手を染めるに至る経緯だって、本人には何らかの言い分があるかもしれないではないか。映画を観ていても、そのあたりがどうもスッキリしない。

 映画を最後まで観ると、これが『スティング』などと同じ系統の映画だと言うことがわかる。(やばい、こんなこと書いたらネタバレ寸前だ。)しかし『スティング』は悪党同士の対立にユーモアもあれば人情もあり、主人公たちに肩入れしながら手に汗握れる痛快作だった。でもこの映画は、主人公のイ・ガンジュンが、観客にとっても馴染みにくい謎めいた人物過ぎるのだ。主人公の目的がペ会長への復讐なら、その原因となった過去の事件をもっと丁寧に描いてほしい。主人公が何をやろうとしているのかを、肝心なところは伏せておくにせよ、方向性ぐらいは観客に知らせておいてほしい。映画を最後まで観ればすべてわかるけれど、それまで観客が外野席に放置されてしまうのはもったいない。

(英題:Insadong Scandal)

6月26日公開予定 シネマート六本木、シネマート心斎橋
配給:エスピーオー 宣伝:ユナイテッド・エンタテインメント
2009年|1時間49分|韓国|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.insadong-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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