パーフェクト・ゲッタウェイ

2009/12/02 京橋テアトル試写室
映画の「よくあるパターン」を逆手に取った脚本構成。
ひねくれた映画ファンにオススメ。by K. Hattori

A Perfect Getaway (Theatrical/Unrated Director's Cut)  映画ファンはそれが賞賛であれ非難の言葉であれ、「いかにもハリウッド映画」とか「ハリウッド映画らしい展開」などと口にすることがある。世界市場で商品として流通するハリウッド映画には映画作りのノウハウが蓄積されていて、映画の設計図である脚本には一定の方程式が存在する。どんなジャンルのどんな映画であれ、その方程式に沿って作られていれば「いかにもハリウッド映画」になるし、その方程式に沿って話が進めば「ハリウッド映画らしい展開」になる。ハリウッド映画の方程式は映画に一定の面白さを約束するものの、その方程式を超えた破格の作品を作る自由は失われる。そのため意欲を持つ映画の作り手たちは、何と過去の方程式を出し抜こうとあれこれ知恵を絞るのだ。本作『パーフェクト・ゲッタウェイ』も、そんな知恵を絞った映画になっている。

 主人公は映画脚本家のクリフと新妻シドニー。結婚式を挙げたばかりのふたりは新婚旅行に出かけたハワイで、原生林を抜けて世界一美しいと言われるビーチを目指すトレッキングを始める。途中から車は使えず、頼るのは自分の両足のみ。途中で野宿も必要な旅だが、一生残る思い出作りには最適だ。ふたりは途中で、自分たちと同世代の2組のカップルに出会う。最初に出会ったのは、声を荒げて粗暴な雰囲気を漂わせるケイルと、おびえたような目をしながら彼に従うクレオ。もう一組はやたらと愛想がよく馴れ馴れしい態度で近づいてきたニックと、その恋人のジーナ。ニックは脚本家だというクリフに、自分がこれまで繰り広げてきた数々の冒険を映画にしないかと売り込んでくるが、その話がどうもいちいち嘘くさい。だがそんな彼らのもとに、恐ろしい知らせが届く。ハワイを訪れた新婚カップルが殺され、男女二人組の犯人がこの島に逃げ込んでいるらしいのだ。ひょっとすると、さっき出会ったケイルとクレオが殺人犯? むしろニックとジーナが怪しい? このまま旅を続けるべきか、それとも戻るのか。クリフとシドニーは不安になるのだが……。

 クリフは新人脚本家だが、彼と同行することになるホラ吹き男のニックは、かつて脚本家養成セミナーを受講したことがあり(本当かどうか怪しいのだが)、プロの脚本家であるクリフにあれこれ脚本論をぶつけてきたりする。こうした映画談義は映画の本筋とはまるで関係がないのだが、観客に対して「ハリウッド流の映画方程式」を強く意識させることになる。これはマジシャンがひとつの手品のタネを見せてから次の手品に入るのと同じで、「今見せたタネは使いませんよ」という客に対するメッセージだ。そして実際、この映画はハリウッドの方程式を見事に乗り越えてみせる。

 そんなわけで映画の構成は面白いのだが、個々の描写に切れ味が不足しているのは残念。アイデアは良かったが、手際が悪かった。

(原題:A Perfect Getaway)

1月23日公開予定 新宿ピカデリー、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給・宣伝:プレシディオ
2009年|1時間37分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DOLBY DIGITAL
関連ホームページ:http://www.perfect-getaway.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:パーフェクト・ゲッタウェイ
DVD (Amazon.com):A Perfect Getaway
関連DVD:デヴィッド・トゥーヒー監督
関連DVD:ミラ・ジョヴォヴィッチ
関連DVD:ティモシー・オリファント
関連DVD:キエレ・サンチェス
関連DVD:スティーヴ・ザーン
関連DVD:マーリー・シェルトン
関連DVD:クリス・ヘムズワース
ホームページ
ホームページへ