マイケル・ジャクソン

THIS IS IT

2009/10/28 丸の内ピカデリー1(完成披露試写)
ステージの上で輝いているマイケルの姿がまぶしい。
マイケルは最後までマイケルだった。by K. Hattori

マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]  2009年7月からロンドンで行うことが予定されていたコンサートを目前にして、6月25日に急死したマイケル・ジャクソン。彼が死の直前まで行っていたコンサートのリハーサルの様子を、2時間弱にまとめたドキュメンタリー映画だ。もともと映画として上映する予定はなく、せいぜいコンサートDVDの特典映像などに収録されるようなものだったはず。しかしそれがマイケルの死によって、全世界の映画館でスクリーンにかけられることになった。限定2週間の予定だったが、劇場には人が殺到して急遽2週間延長。このあたりは既定路線という気がしないでもないが、この映画が今年の映画界にとっても音楽界にとっても最大の話題作となったのは間違いないだろう。

 マイケル・ジャクソンの芸歴は長い。1966年に兄たちと「ジャクソン5」を結成し、66年にメジャーデビューすると次々にヒットチャートの1位を記録。70年代にはソロデビューし、78年にはクインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えて「オフ・ザ・ウォール」を発売。続いて82年に発売された「スリラー」が爆発的な大ヒットとなって、80年代のポピュラー音楽シーンはマイケル・ジャクソン中心に回っているような印象だった。1985年の「ウィー・アー・ザ・ワールド」は、その象徴的な出来事だった。1986年のアルバム「BAD」を経て、87年から88年のワールドツアーあたりまでが、マイケル・ジャクソンにとってキャリアのピークだったのではないだろうか。1990年代に入ると、マイケル・ジャクソンは音楽活動より奇行やスキャンダルで芸能ニュースを賑わせる人になってしまった。

 僕は1980年代に「スリラー」でにわかマイケル・ファンになり、90年代に社会がマイケルを忘れる頃には同じようにマイケルから離れている。しかし今回の『THIS IS IT』は、そんな僕が観ても懐かしい曲のオンパレード。ステージの上のマイケルのパフォーマンスは素晴らしい。歌もダンスも最高だ。セットもゴージャス。サポートのダンサーたちと作り上げる劇的空間は、「ああ、マイケルにこれを実際に観客の前で演じてほしかった!」と誰しもが思うクオリティ。僕は画面を観ながら、何度か涙が出た。このマイケルの姿を、劇場映画として全世界に届けようとした人たちの思いもわかる。どんな形であれ、マイケルをファンの前に立たせることこそが、マイケルの思いに報いることだろう。

 しかし、それでも僕は思ってしまう。マイケル・ジャクソンの全盛期は1980年代であり、仮に彼がロンドン・コンサートを成功させて全世界に復活をアピールしても、彼は「懐メロ歌手」でしかなかったという悲しい事実に気づいてしまう。歌われる曲は懐かしの名曲ばかり。ステージの演出も、過去のPVをアレンジしたようなもの。自分の過去の栄光を忠実になぞることで、ファンの期待に応えようとする往年の人気歌手だ。

(原題:This Is It)

10月28日公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間51分|アメリカ|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/michaeljacksonthisisit/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD(Amazon特設ストア):マイケル・ジャクソン THIS IS IT
DVD:マイケル・ジャクソン THIS IS IT
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