ドキュメンタリー頭脳警察1

2009/09/01 映画美学校第1試写室
PANTAとTOSHIによる伝説のバンド頭脳警察に密着取材。
長大な全3部作のオープニング。by K. Hattori

Zunokeisatsu  1969年に結成され、学生運動時代の若者たちから熱狂的な支持を受けたバンド、頭脳警察。過激な歌詞やパフォーマンスから、何度も発売禁止や放送禁止処分を受け、1975年に解散。しかしメンバーのPANTAとTOSHIはその後も音楽活動を続け、1990年から1年間だけ頭脳警察は再結成。その後は2001年に再々結成して現在に至る。しかし2001年以降の活動は「解散」こそしないものの、イベント的に集まっては休み、休んではまた始めるという散発的なものだった。彼らが本格的に活動を再始動させるのは2008年から。各地でライブを行いつつ、今年は頭脳警察として18年ぶりのオリジナル・アルバムも発売される。

 そんな頭脳警察の今現在を、3年前から丁寧に取材していたのがこのドキュメンタリーだ。三部作で総上映時間は5時間14分。1本ずつそれぞれ独立した映画になっているのだが、それでもこれは長い。僕は最初に手渡された資料でこの長さを知ったときから、これはきっとダメな映画になっているのだろうと思った。たぶん3年も取材していたから、どのシーンやエピソードもかわいくて短く編集できなくなってしまったのだろう。同じように長期取材した『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』は11年かけて取材した内容をちゃんと2時間以内に編集しているのに、この『ドキュメンタリー頭脳警察』はたった3年の取材を5時間にしかできなかった。これは絶対にユルイ映像になっているだろう。映画を観る前に余談は禁物なのだが、僕は何となくそう考えていた。

 しかしこの映画が、じつに面白いのだ。パティ・スミスの映画と比べたってしょうがない。そもそもふたつの映画は、時間についての考え方が違うのだから。パティ・スミスの映画は11年の時間の中で切り取られた映像を、アルバムの中の写真のように配置している。ひとつひとつの映像は互いに関連がない断片なのだ。そしてそれらの断片を積み上げていく中から、パティ・スミスという人物を多面的にとらえようとしている。でも『ドキュメンタリー頭脳警察』は違う。これはずっと普通の映画に近い。ストーリーがあって、ドラマがあって、主役がいて、脇役がいて、ある状態が時間をかけて別の状態へと変化していく。

 映画は再始動した頭脳警察のライブから始まり、3年前にさかのぼって再始動までの道のりを再びたどっていくという構成になっている。しかし映画の最後になっても、頭脳警察はまだ動き出さない。この手の構成の映画では、映画のオープニングとエンディングがつながってループになるのが常だと思うのだが、少なくともこの第1部ではそれが起きない。頭脳警察の再始動という物語はまだ遠い未来にある。『ロード・オブ・ザ・リング』の1部を観終えた後のような、達成感と続編への期待に満ちたエンディング。ライブシーンも臨場感たっぷりだった。

11月7日公開予定 シアターN渋谷
配給・宣伝:トランスフォーマー 宣伝:太秦
2009年|1時間47分|日本|カラー|ステレオ
関連ホームページ:http://brain-police.net/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ドキュメンタリー頭脳警察
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