劇場版

虫皇帝

2009/08/03 映画美学校第1試写室
世界中の大型昆虫と毒蟲たちが勢揃いして過激なバトル!
歴史に残る超カルトムービーだろう。by K. Hattori

Mushikotei  小学校の学級文庫や図書館にあった大判の昆虫図鑑。そこにはカブトムシやクワガタがいかに力が強いのかが、さまざまな実験の写真と共に添えられていたものだ。雑木林の樹液を巡って、カブトムシやクワガタ、カナブンやスズメバチらが争うこともしばしばあることを、記録映画やテレビドキュメンタリーで見て知っている。しかしそこで常に勝利するのはカブトムシ。カブトムシこそ昆虫界の王者なのだ。だが世界にはまだまだ多くの昆虫たちがいる。生息地が異なるため自然界では決して出会うことのないそれらの昆虫たちを、人間の手で一堂に集めて戦わせたらどうなるか? そんな小学生並みのアイデアを実現させてしまったのが、小説家・新堂冬樹のプロデュースした「虫皇帝」シリーズだ。これまでにクワガタ編とカブトムシ編のDVDが発売されていて、画像の一部はYoutubeなどにもアップロードされている。これはこれで、なかなか面白いものだ。見ていると少年時代のような、ほのぼのとした気持ちになれる。

 今回はその劇場版なのだが、これが結構タイヘンな内容になっている。コンセプトは「昆虫軍団VS毒蟲軍団」というもので、カブトムシ、クワガタ、カマキリ、タガメなどの大型昆虫たちが、サソリ、ムカデ、クモといった毒性のある虫たちと戦うのだ。相手をひっくり返したり土俵から押し出せば終わるクワガタやカブトムシの戦いとは異なり、ここで行われているのはどちらかが戦闘不能になるか完全に繊維を失うまで続けられるデスマッチ。狭いアクリルケースの中に押し込められた2匹の虫たちは、己の意思(生存本能以外にそんなものがあるとしての話だが)とは無関係に見ず知らずの相手と死闘を演じる羽目になる。その様子は、凄惨、残酷、無惨、むごたらしい、グロテスク、汚らしい……といった形容詞をいくら並べても表現しきれないほど身の毛のよだつもの。虫たちは生きたまま相手に押しつぶされ、食いちぎられ、切断され、乳白色や黄褐色のねばねばした体液をまき散らしながら、それでも下等動物の悲しさでまだ活発に動き回るのだ。しかもこの残酷絵巻が、幅数メートルのスクリーン一杯に拡大される。

 上映時間は1時間半ほどだが、その間に行われる24試合のどれもが目を覆わんばかりの凄惨な地獄絵図。スプラッタ映画で人間の首が飛ぶのは作り物だから笑っていられるのだが、この映画に出てくる虫はどれも本物だ。それがアクリルケースの中で内臓と体液をぶちまけながらうごめいている姿を見ていると、全身に鳥肌が立って来るような戦慄を覚える。自分の何倍もあるような相手に追われて逃げ道を探す虫たちの爪が、アクリルケースの表面をこするキーキーという不愉快な音。断末魔の昆虫が最後に羽をばたつかせる、パサパサという乾いた羽ばたき。喉の奥から、何か酸っぱい液体がせり上がってくるような不快感を味わうこと請け合いだ。

8月29日公開予定 新宿K's cinema
配給:彩プロ 宣伝:彩プロ、アルゴ・ピクチャーズ
2009年|1時間33分|日本|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.mushikotei.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:劇場版 虫皇帝
関連DVD:新堂冬樹監督
関連DVD:世界最強虫王決定戦
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