アマルフィ

女神の報酬

2009/07/24 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン8)
織田裕二がスーパー外交官に扮したサスペンス・アクション。
設定が面白い。シリーズ化希望。by K. Hattori

アマルフィ 女神の報酬 オリジナル・サウンドトラック  フジテレビ開局50周年記念として製作された、織田裕二主演のサスペンス・アクション大作。サミット出席のためイタリアを訪れる外務大臣を迎えるため、準備に大騒ぎの現地日本大使館。そこに飛び込んできたのは、ローマ市内の美術館で日本人少女が迷子になったという連絡だった。現場で少女の母親や警備員たちから事情を聞いていた大使館職員たちは、犯人を名乗る男からの電話によって、これが身代金目的の誘拐事件であることを知る。たまたま犯人たちとの交渉役になってしまった大使館職員の黒田康作は、本来の任務そっちのけでこの誘拐事件に関わり合うことになるのだが……。

 真保裕一が映画のために書き下ろした小説「アマルフィ」をもとに、真保裕一と西谷弘監督が共同で脚本を執筆している。企画の発端は「織田裕二主演で映画を」というもの。真保裕一は『ホワイトアウト』、西谷監督は『県庁の星』で織田裕二と組んだことがあり、今回の映画は織田裕二の持ち味をうまく引き出した作品になっている。例えば織田裕二の周囲に天海祐希と戸田恵梨香という女性キャストを配置しながら、そこにまったくロマンスのかけらも発生しない。色恋の脇道に逸れないことで、物語はテンポよく前に進んでいくのだ。男っぽいがセックスの匂いがまったくしない織田裕二のキャラクターなしに、こんな展開は考えられない。

 物語のアイデアや展開は先行するいくつかの映画に似ているものがあり、特にヒッチコックの『暗殺者の家』やその再映画化『知りすぎていた男』との類似は多い。子供の誘拐。要人テロ。クライマックスはコンサート会場。同じように『知りすぎていた男』を下敷きにしたサスペンス映画には『イーグル・アイ』があったが、じつは今回の映画にはそれとも類似したアイデアもちらりほらり。しかしこの映画はそれを上手くオリジナルの物語に書き直しているし、むしろ先行作品を引用することで映画ファンを楽しませようとしている気配も感じられる。例えば主人公がスペイン広場の大階段で、落ちていたジェラートを踏みつぶすシーンがある。スペイン広場でジェラートと言えば、もちろんそれは『ローマの休日』からの引用なのだ。

 この映画のコンセプトは、織田裕二主演の和製ジェームス・ボンドかもしれない。主人公の黒田は、日本国外での対テロ対策を担当する一匹狼の日本人外交官。語学は堪能。度胸は満点。運動神経も抜群だ。しかし外交官という身分が、自由な行動を妨げる縛りにもなる。捜査権限はない。銃を振り回すことも出来ない。制約の中でどれだけの仕事をさせられるかが、作り手の知恵と腕の見せ所。今回はそれが、うまく形になっている。このキャラクター設定はユニークなので、まだまだ新しい話が作れそうではないか。これは2〜3年に1作のペースで、人気シリーズに育ててほしい。織田裕二は『踊る大捜査線』に続いて、新しい当たり役を手に入れたと思う。

7月18日公開予定 TOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー
配給:東宝
2009年|2時間5分|日本|カラー|サイズ|サウンド
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アマルフィ 女神の報酬
サントラCD:アマルフィ 女神の報酬
主題歌収録CD:アマルフィ~サラ・ブライトマン・ラヴ・ソングス~
原作:アマルフィ(真保裕一)
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