ホノカアボーイ

2009/03/25 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン8)
ハワイの小さな町で映写技師として働く日本人青年の物語。
実話ベースだが映画はほとんどファンタジー。by K. Hattori

ホノカアボーイ オリジナル・サウンドトラック  ハワイ島北部にある小さな町ホノカア。そのメインストリートにある古い映画館で、アルバイト生活を始めた日本人青年レオ。日系人が多く住むこの町で、彼はビーさんという料理好きのおばあさんに出会う。「これからもちょくちょく来なさい。毎日、ご飯食べに来なさい」というビーさんの好意に甘えて、連日美味いタダメシにありついていたレオ。ハワイの美しい自然と優しい人々に囲まれた夢のような日々は、永遠に続くかに思われたのだが……。

 写真家・ライター・モデルとして活躍している原作者の吉田玲雄が自分自身のハワイ滞在体験を綴った紀行エッセイ「ホノカアボーイ」を、CMディレクター出身の真田敦監督が岡田将生主演で映画化した作品。脚色は高崎卓馬。物語の舞台はハワイで、撮影もほとんど現地ホノカアを中心に行われているのだが、登場する俳優たちはほとんど全部日本人で、劇中で使われている言葉もほとんどすべて日本語。ビーさんを演じる倍賞千恵子以下、松坂慶子、喜味こいし、深津絵里、蒼井優などみんな日本人なのだ。ハワイの女の子を演じているのは実際にハワイ育ちの長谷川潤。その恋人を演じているのは、原作者の吉田玲雄本人でありました!

 原作は未読だが実話だという。しかし映画はそれを、ひとりの青年(少年)の「一夏の体験」のような物語にまとめ上げている。学校に行くでもなく、きちんと仕事をするでもない、日常を離れた夏休みのような時間。主人公の青年は多くの人々と出会い、別れ、恋をして、人生の何かを学んでいく。しかし夏休みは永遠には続かない。いずれ青年の夏は終わるのだ。映画の中で実際にどの程度の時間が流れているのかはわからないが、何しろハワイは「常夏の島」だ。主人公が島を離れるまで、彼の夏休みは終わることがない。

 倍賞千恵子扮するビーさんが、自分よりずっと年下のレオに恋をする……というのがこの映画の筋立て。レオの前でまるで少女のように振る舞うビーさんの姿は、どこかで『ハウルの動く城』のソフィー(倍賞千恵子が声を演じた)と通じ合う。純真な少女と老婆が、ひとりの人間の中で同居しているのだ。

 主人公レオは今はやりの「草食系男子」といった雰囲気。周囲に愛想よくして好感は持たれるが、おっとり型のマイペースで、恋愛に関しても「とりあえずお友達から」始まって結局は「お友達」のまま終わってしまうようなタイプだ。それが映画全体の基本的なトーンになって、優しくてフンワリとした、温かくて甘い映画になっているのだろう。この映画の主人公は、ドラマを自分の力で推進させていくパワーには欠けている。でもポカポカ陽気の海辺でふわふわと波間を漂うような、いい意味でのルーズでだらしない、弛緩したムードが心地いいといえば心地よいのも確かだ。

 最近の女の子たちはこういう草食系男子が好きなのかな? 僕もあまり恋愛にガツガツしない草食系だけど、残念なことにもはや「草食系中年」だな……。

3月14日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国東宝系
配給:東宝
2009年|1時間51分|日本|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.honokaa-boy.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ホノカアボーイ
サントラCD:ホノカアボーイ
原作: ホノカアボーイ(吉田玲雄)
関連DVD:真田敦監督
関連DVD:岡田将生
関連DVD:倍賞千恵子
関連DVD:長谷川潤
関連DVD:喜味こいし
関連DVD:正司照枝
関連DVD:蒼井優
関連DVD:深津絵里
関連DVD:吉田玲雄
関連DVD:松坂慶子
ホームページ
ホームページへ