ワンダーラスト

2008/12/12 映画美学校第2試写室
マドンナの初監督作はロンドンを舞台にした青春群像劇。
主演のユージン・ハッツは要注目。by K. Hattori

Filth and Wisdom 27 x 40 (approx.) Poster  1980年代からポピュラー音楽シーンのトップに君臨し、女優としても20本近い映画に出演するなどマルチな才能を発揮しながら活躍しているマドンナの初監督作品。ロンドンで暮らす3人の若者たちが、夢を実現させていく様子を描いた青春群像劇だ。『堕落と知恵』という意味の原題通り、この映画で描かれているのは「夢を実現するためには堕落するのも厭わず」という知恵を身につけた若者たち。主人公たち3人は自分たちの夢実現のために、善良な市民(だと自分では思っている人々)が見ればギョッとするような生き方を自ら選択する。ロックスターを目指すウクライナ移民のAKは、SMプレイの調教師役として変態オヤジたちのケツを蹴り上げる日々。アフリカで饑餓と病気に苦しむ子供たちを助けることを夢見るジュリエットは、勤めている薬局で店主の隙を見ては棚の薬瓶をちょろまかしている。バレリーナとしてなかなか芽のでないホリーは、ストリップ小屋でヌードダンサーとして働き始める。こうした青春像には、バレリーナを目指しながらいかがわしい映画などにも出演していたマドンナの実体験が反映されているのだろう。

 物語の中では主人公たち3人が「堕落」していくわけだが、それを生活の糧を得るための安易な選択だとは決して描いていない。彼らは易きに流れたわけではないのだ。AKはSM調教師の傍ら音楽活動も熱心に精力的に続けているし、ジュリエットもアフリカの子供たち救済のため本気で自分を献げようとしている。(薬局で盗んだ薬も、アフリカで子供たちのために使おうとしているらしい。)劇中最も印象的なのはバレリーナを目指すホリーが、ストリップの世界で大きな挫折を味わうエピソードだ。バレエダンサーから見れば男たちを煽情する下品なストリップダンスなど……と高をくくっていた彼女は、自分のダンスがストリップの世界ではまるで相手にされないことに大きな挫折感を味わう。ストリッパーたちが踊るポールダンスというのは、あれでなかなか高度な技能が必要な専門性の高いダンスなのだ。(ポールダンスには世界大会もあるし、一般の人にポールダンスを教える専用スタジオもあるらしい。)ストリップをなめきっていたホリーは打ちのめされてすごすごと逃げ帰るのか、それともストリップの世界で新しいダンスにチャレンジするのか……。彼女は後者を選ぶ。

 狂言回しのように物語をリードしていくのはロックスター志望のウクライナ人青年AKだが、演じているのはウクライナ出身のミュージシャン、ユージン・ハッツ。イライジャ・ウッド主演の『僕の大事なコレクション』で、主人公を案内する通訳の青年アレックスを演じていたのも彼だ。実際にミュージシャンでもある彼は、映画の中でも自身のバンド、ゴーゴル・ボルデロと共にステージパフォーマンスを披露。カリスマ性とセックスアピールを兼ね備えた彼は、これから人気が出てくると思う。

(原題:Filth and Wisdom)

1月17日公開 ヒューマンとラストシネマ渋谷
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ
配給協力:ミラクルヴォイス 宣伝:メゾン
2008年|1時間24分|イギリス|カラー|1:1.85|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://wonder-lust.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ワンダーラスト
主題歌CD:Wonderlust King (gogol bordello)
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