ロシュフォールの恋人たち

2008/12/03 銀座テアトルシネマ
若い美人姉妹が運命の恋人に出会うまで。
ドヌーヴ主演の傑作ミュージカル。by K. Hattori

ロシュフォールの恋人たち ― リマスター完全盤  『シェルブールの雨傘』と同じ、監督ジャック・ドゥミと音楽ミシェル・ルグランのコンビによるミュージカル大作。主演はカトリーヌ・ドヌーヴと、当時はドヌーヴより人気があったと言われる実姉フランソワーズ・ドルレアック。共演者としてアメリカからミュージカル映画の大御所ジーン・ケリーと、『ウエスト・サイド物語』のジョージ・チャキリスを招き、さらにジャック・ペランやダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリなどがからむオールスターキャスト。『シェルブール』は愛し合う恋人同士が別れ別れになる悲恋物語だったが、『ロシュフォール』はそれとは正反対に、主人公たちがそれぞれ運命の恋人と出会うまでを描いたハッピーエンドのミュージカル・コメディ。『シェルブール』は全編歌だったが、こちらは通常の台詞から歌に入るというごく普通の形式になっていて親しみやすい。ドヌーヴとドルレアックの姉妹共演は、この映画の翌年にドルレアックが突然交通事故死したことでこの1本に終わってしまったのは残念。

 舞台になっているロシュフォールというのはフランス西部にある小さな町なのだが、町全体を巨大なオープンセットのように活用した屋外撮影がこの映画最大の魅力。最初から最後まで自然光・太陽光がメインなのだ。これによって人物にコントラストの強い影が落ちるといった欠点もあるのだが、その場にある光をたっぷり活用した撮影は、作り物であるミュージカルをぐっとリアルな現実の世界に引き寄せる。もちろんこれが人工的な世界の不自然さを際だたせてしまう場面もあるのだが、そこを強引に音楽の力で乗り越えてしまおうとする作り手の傲慢さがむしろ心地よい。結果としては明らかに不自然なのだが、その不自然さが映画の欠点にはなってるはずがないという作り手の確信。それがスクリーンを通して観客にまで伝染してきてしまうようだ。

 最初から最後まで楽しい曲のオンパレードで、特に主人公姉妹のデュエット・ナンバーはどれも最高。映画としては、物語を音楽が助けていく構成。劇中の「運命の恋人たち」にそれぞれテーマ曲を設定して観客に結果を強く期待させつつ、見え透いたすれ違いドラマでそれを後へ後へと引き延ばしてじらし続けるのだ。この引き延ばし戦術は観ていてイライラさせられるほどなのだが、映画終盤で観客がいい加減くたびれたタイミングを見計らって、主人公姉妹に運命の恋人に出会うことを諦めるような台詞を言わせてドキリとさせたりする。この映画の中で一番恐いシーンは、パリに出発する前にふと語られた姉妹の会話。これに比べたら、劇中の殺人事件なんてなんのことはない。

 ジーン・ケリーがフランスの女の子と踊ると『巴里のアメリカ人』だが、振り付けも『巴里の〜』や『雨に唄えば』など往年のMGMミュージカル映画からの引用がたっぷり仕込んである。これはフレンチミュージカルとアメリカンミュージカルのハイブリッド種なのだ。

(原題:Les Demoiselles de Rochefort)

2009年1月下旬公開予定 シネセゾン渋谷
配給:ハピネット 宣伝:マジックアワー
1967年|2時間7分|フランス、アメリカ|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://demy.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ロシュフォールの恋人たち
DVD (Amazon.com):Les Demoiselles de Rochefort
サントラCD:ロシュフォールの恋人たち
サントラCD:Les Demoiselles de Rochefort
サントラCD:The Young Girls of Rochefort
関連DVD:ジャック・ドゥミ監督
関連DVD:カトリーヌ・ドヌーヴ
関連DVD:フランソワーズ・ドルレアック
関連DVD:ジョージ・チャキリス
関連DVD:ジャック・ペラン
関連DVD:ジーン・ケリー
ホームページ
ホームページへ