弾突 DANTOTSU

2008/08/26 SPE試写室
スティーヴン・セガールが凄腕の殺し屋を演じるB級作。
アクションの鋭さが復活した。by K. Hattori

Pistol Whipped  毎度お馴染みスティーヴン・セガール主演のB級アクション映画。日本じゃ「スティーヴン・セガール芸能生活20周年記念作」と称して形式的に劇場公開されるものの、アメリカじゃDVD市場に直行の低予算映画。まあどうせセガールの映画だし……とあまり期待せずに観た作品ではあるのですが、なかなかどうして、今回のこの映画は「わりと良い!」のです。もちろんその良さは「今年のベストテンに入るぞ」だとか、「セガール・アクション映画の中でも屈指の傑作」だとか、そういうレベルの良さでは決してない。何も期待せずに試写室のふかふか椅子にだらしなく身体をあずけてのほほーんと画面をながめていると、時々ハッと驚かされて思わず背筋がシャキッと伸びてしまうような場面が出現して驚かされるのだ。

 なんとこの映画では、セガールのアクションが往年の鋭い切れ味を取り戻している。僕はセガールの熱心なフォロワーではないので、最近のセガール映画をもれなく観ているわけではない。だからひょっとすると最近のセガールは、どの映画でもこの程度の鋭いアクションを見せているのかもしれない。しかし仮にもしそうだとするなら、僕は今回それをこの映画で初めて知ったわけだ。これはうれしい驚きだった。

 ハリウッドのアクションはここ10年ほどで、すっかり香港流のカンフー・スタイルに染まっている。カンフー・スタイルは京劇ベースの派手な動きが基礎になっていて、これが映画の中でもじつに華麗で見栄えがするわけだ。セガールはマーシャルアーツの達人ではあるのだが、ベースが本物の合気道だから動きに派手さがない。相手が大きく動いても、自分はゆっくりと身体を揺するように体重を移動し、攻撃してくる相手の手足や首をあっという間に固めてしまう。打撃技も画面の中で大きく弧を描いて拳や足を当てるのではなく、手や足が自分と相手との間の最短距離を目にもとまらぬ速度で移動するだけなのだ。セガールのアクションには映画らしい派手さがない。しかしセガールのアクションほど、本物の格闘技らしさを感じさせるものはない。

 そのセガールのアクションがここ何年間か低迷していたのは、自分の持ち味である合気道アクションに対する迷いがあったからだと思う。セガールはアクションシーンに映画的な派手さを持ち込もうとして、自分の持ち味を殺してしまった。

 しかしこの映画の中で、セガールは再び合気道アクション全開の大活躍なのだ。相手の攻撃を瞬時に受け止め、その流れのままあっという間に関節を極めてしまう。セガールのアクションはまだまだイケル。猫も杓子もカンフー・スタイルになる中で、セガールのアクションは個性があってじつに貴重なものだ。

 老け込んだおっさんになることなく、再びよみがえったセガールのアクション。今回の映画では彼がラブシーンを演じているのも衝撃的。このオヤジ、まだまだイケてます!!

(原題:Pistol Whipped)

9月13日公開予定 銀座シネパトス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給協力:メディアボックス
2007年|1時間40分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SDDS、SD*R、SR
関連ホームページ:http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/dantotsu/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:弾突 DANTOTSU
DVD (Amazon.com):Pistol Whipped
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