王妃の紋章

2008/04/19 楽天地シネマズ錦糸町(スクリーン2)
10世紀の中国王朝を舞台にした愛と葛藤と憎しみのドラマ。
チャン・イーモウ監督+コン・リー主演。by K. Hattori

カース・オブ・ザ・ゴールデン・フラワー/黄金甲  7世紀初頭以来およそ300年に渡って中国を支配してきた唐が滅んだ後、中国は各地に王朝や政権が乱立する五代十国と呼ばれる時代に入る。軍人出身の王たちが互いに隣国を牽制しながら、虎視眈々と覇権を狙う一種の戦国時代だ。『王妃の紋章』の舞台はそんな政情不安定な時代。王は自らの権力と権限を周囲に誇示するため、豪華絢爛な王宮を築いて多くの人間を集めて一族の結束を固める一方、自分の地位を脅かすものやその可能性を持つ者には容赦なく死で報いた。

 そんな中で王妃が王を裏切り、王が王妃の毒殺を企てるというのが、映画『王妃の紋章』の発端だ。自分の権力拡大のため政略結婚で隣国の姫を娶った王にとって、王妃は政策の道具に過ぎない。自らが愛されていないことを知る王妃は愛と欲望のはけ口として、亡くなった前夫人が産み落とした皇太子に接近する。王はそんな王妃に薬と称して毒を飲ませている。王妃を殺して隣国と敵対関係になることを恐れ、病死に見せかけて殺そうというたくらみなのだ。密偵の働きで王が自らに毒を盛っていることを知った王妃は、自らを守るために王に反逆を企てるのだが……。

 王妃が毒を盛られていることは映画の早い段階で明らかにされるのだが、その理由は明かされない。しかし観客は王妃と皇太子の不倫を早くから知らされているので、それと毒の関係をすぐに結びつけて考えるはずだ。この宮殿内部では、王と王妃が完全に敵対している。あとはその他の登場人物たちが、王と王妃のどちらに与するかという話になる。皇太子は王妃と通じているのだから彼女に付くのか。しかし彼は王妃との関係を断ち切りたいと願っているばかりか、王妃の他に若い女官の愛人がいる。王妃にとって実の息子である第二王子は彼女を裏切らないだろうが、映画の最初で彼の実力が王に及ばないことが描かれているから観客は不安になる。第三王子はまだ幼くてまったく頼りにならない。王妃の手足として働く密偵の女は、はたしてどの程度力になってくれるのだろうか。映画はコン・リー演じる王妃の視点から、重陽節の行事に仕掛けられた王妃によるクーデター計画を描いていく。

 チャン・イーモウ監督作としては『HERO』や『LOVERS』につながる中華アクション大作だが、封建的な小さく閉じた人間関係の中でヒロインがたくましく自分の生きる道を模索するという筋立ては、『紅いコーリャン』『菊豆(チュイトウ)』『紅夢』などの初期作品を思わせる。ヒロインの王妃を演じるのがこれら初期作品に主演していたコン・リーだということも、そうした印象を強めている。色彩豊かな画面の構成や、大勢の人間を平面的に配置して画面を埋め尽くす様子は、監督が演出したオペラ「トゥーランドット」にもあったもの。要するにこの映画の中には、チャン・イーモウのありとあらゆる要素が詰め込まれているのだ。映像のボリューム感には圧倒されてしまう。

(原題:満城尽帯黄金甲)

4月12日公開 東劇ほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース
2006|1時間54分|中国、香港|カラー|1:2.35|Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/ouhi/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:王妃の紋章
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