ラスベガスをぶっつぶせ

2008/04/04 SPE試写室
MITの天才学生が数学理論を使ってカジノで荒稼ぎ。
実話をベースにした青春映画。by K. Hattori

21  カジノの人気ゲームであるブラックジャック。あらゆるギャンブルに必勝法ではないものの、ことブラックジャックに関しては飛躍的に勝率をアップさせる合理的な方法が存在する。それはゲームをしている間、場にさらされたカードをすべて記憶してしまうこと。これによって残っているカードの数字がある程度は予測でき、トータルでは収支が必ずプラスになるというわけだ。映画『ラスベガスをぶっつぶせ』は、このカード記憶法を利用してカジノで荒稼ぎしていたMIT学生チームの実話をもとにした作品だ。主演はジム・スタージェスとケイト・ボスワース。学生たちにブラックジャック必勝法を伝授する数学教授を、本作の製作も兼ねたケヴィン・スペイシーが演じている。

 MITの優秀な学生で、イケメンの好青年ベン・キャンベルの悩みは切実だ。卒業後の進路として名門ハーバード大学医学部の入試に合格したものの、高額の学費が工面できないのだ。女手ひとつで自分を育ててくれた母親に、これ以上の心配と迷惑はかけたくない。しかし時給8ドルのバイトに明け暮れる苦学生では、30万ドルなど夢のまた夢。だがそんな彼に、数学教授のミッキー・ローザが声をかける。ベンの記憶力と計算能力を生かして、ラスベガスでブラックジャックをすれば大儲けできるという提案だ。ベンは学費稼ぎと割り切って、この話に乗ることにしたのだが……。

 この映画は「金を手に入れるが魂を失う男」が基本モチーフ。主人公は貧乏学生の素性を隠してベガスで“ビジネス”をするうちに、自分自身の本当の姿がわからなくなっていく。ベガスのカジノで大金の札びらを切り、豪華ホテルのルームサービスと高級クラブでの飲食、ブランドもののブティックでショッピング三昧という贅沢な暮らし。だがそれはプロのプレイヤーを排除しようとするカジノを欺く偽りの姿であり、彼の本来の姿はやはり苦学生なのだ。だが始めは「仮の姿」だったベガスでの暮らしが、少しずつ彼の体に染みついてくる。彼はベガスでの派手な暮らしに居心地の良さを感じ、本来の大学生活を地味で陰気で味気ないものだと感じるようになる。

 こうした方向に動き始めた物語は、最後に主人公の破滅で幕を閉じるのが常だ。ベンもその例に漏れず、破滅への道をひた走る。だが映画は終盤で、「放蕩息子の帰還」路線に乗り換える。すべてを失った主人公は、自分の帰るべき場所へと戻っていく。だがこの放蕩息子はやはり天才だった。しかもハングリーな天才だ。転んでもただでは起きない。映画はここから驚愕のクライマックスへと突き進んでいく。

 筋立てはパターン通りだし、主人公以外の登場人物はみな類型的。映画としての弱さもたくさん持っている映画だ。でもカジノのゴージャスなムードに酔わせる映像の力強さが、それを十分に補って余りある。カジノを舞台に善玉悪玉入り乱れる、青年版『オーシャンズ11』みたいで楽しいのだ。

(原題:21)

5月31日公開予定 有楽座ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年|2時間2分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SR-D、SR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/21/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ラスベガスをぶっつぶせ
サントラCD:ラスベガスをぶっつぶせ
サントラCD:21
原作:ラス・ヴェガスをブッつぶせ!
関連書籍:カジノは奴らを逃がさない!
原作洋書:Bringing Down the House (Ben Mezrich)
関連DVD:ロバート・ルケティック監督
関連DVD:ジム・スタージェス
関連DVD:ケイト・ボスワース
関連DVD:ローレンス・フィッシュバーン
関連DVD:ケヴィン・スペイシー
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