デス・プルーフ in グラインドハウス

2007/07/24 映画美学校第1試写室
往年のB級プログラムピクチャの巧妙なパスティーシュ。
終盤は笑いっぱなし。最後も爆笑。by K. Hattori

 グラインドハウスというのは、独立系の映画会社が作ったB級のジャンルムービーを2本立て3本立てで上映する場末の映画館のこと。メジャースタジオに元気がなかった60年代から70年代にかけて、アメリカの映画市場で若者たちの映画への飢えを満たしていたのは、こうした映画館と、そこで上映されていたチープなアクション映画やホラー映画なのだ。

 こうした映画をこよなく愛するクエンティン・タランティーノが、盟友ロバート・ロドリゲスと共に製作したのが『グラインドハウス』という2本立てのオムニバス映画。かつてのグラインドハウスを再現すべく、内容はB級カーアクションとSFホラーアクションに決定。そこにフェイクの予告編を付けて、上映時間は3時間の予定だった。ところが映画を作っているうちに、上映時間はどんどん延びていく。結果は2本合わせて4時間の長尺になった。タランティーノとロドリゲスはアメリカ国内での契約に合わせ、これを泣く泣く3時間11分にまで再編集。しかし日本では再編集前の2本の映画を、2本立てではなく独立した2本の作品として別々に上映することになった。

 そんなわけでこの映画『デス・プルーフ』は、本来ならロドリゲス監督の『プラネット・テラー』と2本立てで観るのが正しい。公開劇場では期間をずらして1本ずつ公開されるが、もしリピート鑑賞するなら、ロードショー公開終了後、新文芸坐や早稲田松竹で2本立て上映するのを観るのもGOODだ。おそらくそれこそが、タランティーノやロドリゲスが最も望んだ上映形式に違いない。(なおアメリカ公開の3時間2本立てバージョンも、日本の一部劇場で限定公開されるので、見比べるのも楽しいかも。)

 タランティーノの前作『キル・ビル』もヘンな映画だったが、本作『デス・プルーフ』も計算した上であえてデタラメに作っている作品だ。映画前半に登場するセクシーなヒロインたちが、さんざん気を持たせたあげく、途中で全員死亡してしまうというショッキングな構成。このショックは、ヒッチコックの『サイコ』に匹敵するが、たぶんそれを十分意識した構成だろう。映画後半では新たに登場したヒロインたちが、前半で殺人を犯した犯人を追跡して復讐する。

 見どころは映画終盤のカーチェイス。ここで事実上の主役として大抜擢されているのが、ハリウッドで大活躍中の女性スタント、ゾーイ・ベル。映画に“女優”として出演するのはこれが初めてのようだが、劇中では「女性スタントのゾーイ・ベル」本人を演じて、命がけのスタントを危機として演じている。この映画は、彼女を表舞台に引き出した作品として、映画ファンに語り継がれることになるだろう。

 悪役のカート・ラッセルが最高にキュート。映画終盤は爆笑に次ぐ爆笑だが、その中心には常に彼がいる。大ベテランの新境地。馬鹿な映画を作りながら、タランティーノはやはりただ者じゃない。

(原題:Quentin Tarantino's Death Proof)

9月1日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズ、日比谷みゆき座ほか全国東宝洋画系
配給:ブロードメディア・スタジオ
2007年|1時間53分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|ドルビーデジタル、SDDS、DTS
関連ホームページ:http://www.grindhousemovie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:デス・プルーフ in グラインドハウス
DVD (Amazon.com):Grindhouse Presents - Death Proof
DVD (Amazon.com):Grindhouse Presents: Death Proof
サントラCD:Death Proof
シナリオ:Quentin Tarantino's Death Proof
関連洋書:Grindhouse
ポスター:デス・プルーフ in グラインドハウス
関連DVD:クエンティン・タランティーノ監督
関連DVD:カート・ラッセル
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