ロッキー・ザ・ファイナル

2007/05/07 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン7)
前作から16年。老いたロッキーがリングに戻ってくる。
シリーズ1作目を彷彿とさせる完結編。by K. Hattori

 シリーズ1作目から30年。前作『ロッキー5/最後のドラマ』から16年ぶりに製作された、シリーズ完結のパート6。前作で脳障害が見つかり、リングを降りたはずのロッキー。ミッキーのジムを引き継いで後進の指導に当たっていたはずだが、今回はそんなことに一言も触れないまま彼は再びリングに上るのだ。16年の間には、映画に描ききれないイロイロなことがあったらしい。2006年のロッキーは、故郷の街で小さなイタリアン・レストランを経営している。店名は「エイドリアンのレストラン」。言わずとしれた、彼の愛妻の名だ。だが今はもう、そのエイドリアンもいない。彼女は数年前に病死してしまったのだ。その痛手から立ち直れないまま、ロッキーは自分の店で、往年の名選手目当てにやってくる客たちに昔話をして過ごしている。だが客層は年配者ばかり。ロッキーはもうすっかり過去の人になっているのだ。

 ロッキーの引退したヘビー級ボクシングの頂点には、才能豊かな若手チャンプのディクソンが君臨している。だが対戦相手に恵まれず、好試合が組めないことからチャンピオンの人気は伸び悩んでいる。対戦相手不足に悩む彼の陣営が、興行を成り立たせるために仕組んだノンタイトル戦。それが、往年の名ボクサーであり、今もファンの間でカリスマ的な人気を誇るロッキーとのエキジビション・マッチだった……。今回の映画のストーリーは、30年前の第1作目『ロッキー』をなぞっている。あの時チャンピオンだったのは、やはり黒人王者のアポロ。彼も対戦相手に事欠いて、人気稼ぎのために無名のロッキーを指名したのだ。シリーズ1作目を見ている人なら、これだけでもう、本作の試合の結果を予想できるに違いない。男の意地と誇りをかけて、大方の予想を裏切って最終回まで奮闘したロッキー。そして判定は? その結果など、ロッキーにとっても、観客にとっても、もはやどうでもいいものなのだ。

 本作最大の特徴は、タリア・シャイア演じるエイドリアンの不在だ。シャイア本人は映画に出演したがったが、今回は脚本と監督も兼任したスタローンがそれを断ったらしい。これは正解だった。エイドリアンは、ロッキーの希望と栄光に満ちた過去の象徴なのだ。その幸福な日々は、遠ざかって二度と戻ってくることがない。今はただ、その想い出にひたるだけだ。だが人は過去ではなく、今を生きなければならない。生きている限り、人は未来に向かって歩んでいかなければならない。

 この映画は、スタローンから同世代のオヤジたちに向けた応援歌になっているようにも思う。若い連中に対して、へんに物わかりのいいオヤジになっちゃいかん。若者に道を譲るなんてとんでもない。オヤジは若者の行く手に立ちふさがれ! それを乗り越えることで、若者ははじめて一人前の大人に成長できるのだ! これがスタローンの教育哲学なのかもしれない。スタローン、かっこいいぞ!

(原題:Rocky Balboa)

4月20日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス
2006年|1時間43分|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|DDS、Dolby Digital、DTS
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/rockythefinal/
DVD:ロッキー・ザ・ファイナル
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サントラCD:Rocky Balboa: The Best of Rocky
ノベライズ:ロッキー・ザ・ファイナル
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