忍者

2007/04/04 サンプルビデオ
伊賀と甲賀の忍者軍団が中国で(中国語で)大暴れする。
荒唐無稽ではあるが最後まで観てしまう。by K. Hattori

香港・日本・中国の合作による、現代版忍者アクション映画。戦国乱世の日本で活躍していた忍者軍団が、なぜか現代の中国で生き続けているという奇想天外なアイデア。どうやら中国に渡ったのはかなり古い時代らしく、言葉もすべて中国語になっている。古くから使われている手裏剣や忍び刀といった武器に、捲きビシ、水グモなどの古典的な忍び道具の数々。しかし彼らが使うのはそれだけではなく、最新鋭のハイテク武器や装備も完備しているのだ。古典と最新鋭の長所を兼ね備えた、ハイブリッド種のスーパー忍者である。

 製作に日本側のスタッフも加わっているせいか、あるいは過去の忍者映画や文献を作り手がよく咀嚼しているのか、忍者の考証には歴史的な事実なども盛り込まれている。登場する忍者は、伊賀と甲賀に分かれている。忍者社会には、上忍・中忍・下忍の区別がある。上忍は忍術使いというより、むしろ見た目はエリート・ビジネスマン。中忍と下忍はそんな上忍の命令で動く実戦部隊で、中忍は現場指揮官であると同時に指導者でもある。こうしたマニアックな考証が、しかし映画のリアリティにはまったく貢献していないところが潔い。いかにリアルな設定考証をしようとも、ワイヤーアクションで人間が宙を飛べば、そんなリアリズムは消し飛んでしまう。この映画では、忍者にまつわる専門用語をそれらしくちりばめることで、物語にいくらかの厚みを出そうとしているだけで、その設定に頼って物語を展開しようとはしていない。徹底して娯楽映画。その姿勢はシンプルでストレート。観ていて気持ちいいのだ。

 主人公である女性忍者たちと敵対する甲賀忍者のリーダー格(中忍)として、格闘家の魔裟斗が出演しているのが一応の見所。ほとんど喋らない役で、しかも敵役の憎まれ役なのだが、他の出演者とは一線を画した存在感は立派なもの。アクションは香港流のキビキビしたアクロバティックなものとは違って、むしろモッサリとしたところもあるのだが、それが人物の凄みや刀剣の重量感につながっている。このあたりは、出演者の個性を生かした演出をする香港映画ならではだろう。監督は『八仙飯店之人肉饅頭』で知られるハーマン・ヤウ。

 アクション映画もピンキリで、A級予算をかけた高級品から、低予算のB級作品まである。この映画は紛れもないB級品。しかしB級品にはB級品の楽しみがある。素材の貧相さを濃い味付けでカバーしているジャンクフードにも、高級料理にはない美味さがあるものだ。

 秘密の箱を開く暗号のミステリーに、敵味方に分かれた忍者同士によるラブストーリー。不合理なほどカラフルな忍び装束まで含めて、映画にはサービスがてんこ盛り。いろんな要素をぎっしり詰め込んで、観客を楽しませようとあの手この手で工夫をしているのはたいしたもの。面白いかつまらないかは別にして、作り手の姿勢に好感の持てる映画なのだ!

(原題:終極忍者 Lethal Ninja)

3月31日公開 銀座シネパトス
配給:アートポート
2004年|1時間35分|日本、香港、中国|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.ninja-movie.jp/
DVD:忍者
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