007 カジノ・ロワイヤル

2006/11/15 SPE試写室
シリーズ21作目は主演がダニエル・クレイグにバトンタッチ。
ハードな本格スパイアクションだ。by K. Hattori

 2002年の『ダイ・アナザー・デイ』以来、4年ぶりの007シリーズ最新作。主人公ジェームズ・ボンド役は、ピアーズ・ブロスナンからダニエル・クレイグに交代。このシリーズとしては、彼が6代目のボンド役者になる。小説「カジノ・ロワイヤル」は、原作者イアン・フレミングが1953年に書いた007シリーズの第1作目。それがなぜ今まで映画化されなかったかというと、これだは原作小説の映画化権が別に売れていたからだ。小説は1967年にデヴィッド・ニーブンやピーター・セラーズ主演で一度映画化されているが、内容は原作とはだいぶ離れたスパイ映画のパロディとなった。いわばシリーズの番外編だ。今回の映画は正確には再映画化なのだが、ファンにとっては待ちに待った、念願の映画版『カジノ・ロワイヤル』の登場と言えるのではなかろうか。

 今回の映画では、若き英国諜報部員ジェームズ・ボンドが殺しのライセンスを持つ「00」ナンバーを取得し、苦しく困難な闘いを経てスパイの非情さを身につけていく様子が描かれる。ジェームズ・ボンドが007になるまでの物語というのが、今回の映画のコンセプトだろう。しかしここで大きな疑問がわいてくる。それはこれまでのボンドたちと、今回の新ボンドとの関係性だ。ボンドの上司であるMはジュディ・デンチがこれまでと引き続き演じているので、おそらく世界観としてはブロスナン版のボンドの世界をそのまま引き継いでいるはず。「冷戦時代はよかった」という会話が出てくることから見ても、今回の話が過去の物語であることはあり得ない。これは間違いなく21世紀の今この時を時代背景とした、新しいジェームズ・ボンドなのだ。

 おそらく映画の中の世界は、1962年に製作されたシリーズ1作目『007/ドクター・ノオ』からすべてつながっているのだ。ただし映画の中で役者が代替わりするように、MI6内部でも007が次々交代していくに違いない。ジェームズ・ボンドという名前は、MI6内で特定の任務を与えられる工作員のコードネームだ。CIAのフェリックス・レイターも間違いなく同じような形で、次々に人員が交代しているのだろう。

 007ことジェームズ・ボンドは、いわば架空のキャラクターなのだ。考えてみれば、世界各地でこれほど派手で目立った活動をしている大物スパイが、行く先々で「名前はジェームズ。ジェームズ・ボンドだ」と自己紹介しているのがおかしいではないか。これは当然本名ではなく、偽名だと考えた方が自然だ。こうしてジェームズ・ボンドの名を有名にすることで、MI6は「超大物スパイのジェームズ・ボンド」という虚像を作り上げている。秘密工作組織にとって、これは一種の煙幕になるのだ。本来目的とする別の任務を、ボンドの派手な活躍でカモフラージュすることができる。ボンドは『北北西に進路を取れ』のジョージ・カプランを、生身で生きているのだ。

(原題:Casino Royale)

12月1日公開予定 丸の内ルーブルほか全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2006年|2時間24分|イギリス、チェコ、ドイツ、アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/casinoroyale/
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