ダニエラという女

2006/10/24 メディアボックス試写室
美しい娼婦ダニエラを巡る大人の恋愛ファンタジー。
主演はホントに美しいモニカ・ベルッチ。by K. Hattori

 モニカ・ベルッチが男たちを虜にする美しい娼婦ダニエラを演じる、ベルトラン・ブリエ監督のラブ・コメディ。しかしこのコメディは、かなり辛辣だ。映画は一応ハッピーエンドなのだが、人によってはこのエンディングに違和感を感じるかもしれない。しかしある程度恋の場数を踏んで、恋愛の裏も表もその楽しみ方を一通り知っている人なら、この映画が描くひねった恋模様を十分に楽しむことができると思う。

 会社勤めをしている平凡な中年男フランソワは、たまたま買った宝くじが大当たり。飾り窓で見かけた美しい娼婦ダニエラを見初め、金が続く限り彼女と一緒に生活しようと決意する。しかしフランソワは心臓が悪く、妖艶なダニエラとの暮らしはきわめて危険。それでも彼はダニエラとの暮らしをエンジョイし、共に食事を取り、ベッドで愛し合い、旅行に出かけて大はしゃぎする。だがそんな彼女との暮らしも、長くは続かなかった。ある日突然、ダニエラは部屋から姿を消してしまったのだ……。

 ここで描かれているのは恋の喜びや楽しさよりも、むしろ恋が生み出す苦しさや辛さだ。恋愛は人の心をバラ色に染め上げる。しかしその一方で、嫉妬や疑心暗鬼、喪失感、不安などで、人を散々に苦しめもする。だがこれもまた、恋の一面なのだ。恋の喜びと苦しみとは、同じコインの裏表。表しかないコインがインチキなように、喜びしかない恋なんてものもやはりインチキくさい。この映画は恋する気持ちの浮き沈みを、笑いを交えながら描いていく。だがその切っ先はかなり鋭い。恋に悩み、恋に苦しむ主人公を、徹底的にいじくり倒していくのだ。

 この映画がそれでも笑えるのは、登場人物の誰にも肩入れすることなく、最初から強く突き放しているからだろう。現実のリアリズムを無視した照明の転換や音楽の使用が異化効果を生み出し、観客はスクリーンの中の世界に最後まで入り込むことができない。しかしこれは、もとよりそれを狙っているのだ。映画というより、舞台の上で上演されている芝居のような雰囲気だ。

 辛い恋や苦しい恋も、恋であることに違いはない。そして楽しい恋や嬉しい恋が人にとって大きな喜びであるのと同じように、辛く苦しい恋も喜びとなる。いや、実際にはちっと違う。恋の辛さや苦しみすらも喜びとするのが、オトナの恋の楽しみ方というものなのだ。ここにはもちろん、いささかマゾヒスティックな感覚がある。でもそれもまた、恋の真実の姿だろう。

 映画の前半に登場する、ジャン=ピエール・ダルッサンのエピソードが印象的だ。傷つき病んだ女を、彼女が死んだあとまで愛し続ける男。この男は登場した途端に退場してしまうのだが(残念)、このエピソードがいわば呼び水となって、苦しく辛い大人の恋のおとぎ話が始まるのだ。

 モニカ・ベルッチは40歳過ぎてますます美しい。撮影時に出産直後だったそうで、体の線がちょっと崩れているのがまたイイ!

(原題:Combien tu m'aimes?)

12月公開予定 シアター・イメージフォーラム、銀座シネパトス
配給:ハピネット、クレストインターナショナル
2005年|1時間35分|フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.crest-inter.co.jp/daniela/
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