氷の微笑2

2006/10/04 メディアボックス試写室
シャロン・ストーン主演で14年ぶりに作られた『氷の微笑』の続編。
相手役のデヴィッド・モリッシーが貧弱。by K. Hattori

 1992年の大ヒット映画『氷の微笑』の続編。製作のマリオ・カサールと主演のシャロン・ストーンはそのままに、他のメンバーは総入れ替えになった。監督はポール・バーホーベンから、『メンフィス・ベル』や『ジャッカル』のマイケル・ケイトン=ジョーンズに交代。脚本はジョー・エスタハスから、レオラ・パリッシュとヘンリー・ビーンに交代。舞台はサンフランシスコからロンドンに移動。相手役はマイケル・ダグラスから、デヴィッド・モリッシーに交代。製作チームはダグラスの降板がひどく残念だったのか、モリッシー演じる精神科医に、マイケル・“ダグラス”ならぬマイケル・“グラス”という名を付けている。他の共演者にはデヴィッド・シューリスとシャーロット・ランプリング、ヒュー・ダンシーなど。

 脇の俳優は結構豪華なのに、肝心の相手役であるモリッシーが弱いというパランスの悪さが、この映画最大の弱点かもしれない。ほとんどゲスト的な扱いのランプリングはともかく、シューリスなんていろんな場面に出ているのにゲストにしか見えない。こうした有名かつ実力のある俳優とからめばからむほど、デヴィッド・モリッシーは存在感が希薄になる。しかも彼はヒロインのキャサリン・トラメルに翻弄されてふらふらになるので、存在感はなおさら紙のように薄くなっていくのだ。

 基本的にストーリーは1作目と同じコンセプトなのだが、1作目の段階ではキャサリン役のストーンがまだ無名で、相手役のマイケル・ダグラスの方が断然有名な大スターだったし、彼のタフガイぶりにはキャサリンの巧妙な罠に負けない雄々しい存在感があった。(当時の彼はセックス中毒との報道があるほど、精力満点のギラギラした男っ振りだったのだ。)それに対して今回はシャロン・ストーンが既に大スターになっている。本当ならこうした俳優のポジションに応じて、キャラクターの設定や脚本のコンセプトを大幅に変更すべきだったと思う。

 果物は熟れて身が柔らかくなってきたころが食べごろ。シャロン・ストーンは1958年生まれだというから、92年の『氷の微笑』の段階で34歳。少し身の固さが取れた、まさに今が完熟というイイ女だった。それが今回の映画で、彼女は48歳になっている。保管管理状態の悪いオンナならとっくに腐っていても不思議でないが、シャロン・ストーンは腐乱する寸前にまで熟しきった濃厚なエロスの香りをまき散らし、この映画全体を支配しているのだ。オープニングの車の場面から、彼女は自分がまだ男どもを魅了する現役のオンナであることを誇らしげに誇示してみせる。

 1作目はマイケル・ダグラスの視点を軸にしたミステリーだったが、今回はデヴィッド・モリッシーが弱くてミステリードラマとしての機能を果たしていない。結局これは画面の中をキャサリンという怪物が自由自在に動き回る、一種の怪獣映画であるというのが今回の結論だ。

(原題:Basic Instinct 2)

11月11日公開予定 全国シネコンロードショー
配給:シナジー 宣伝:フリーマン
2006年|1時間54分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS
関連ホームページ:http://www.ko-ri2.jp/
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