フラガール

2006/09/26 錦糸町シネマ楽天地(シネマ1)
常磐ハワイアンセンター誕生の実話を映画化。
ダメなところも多いが最後に大挽回!。by K. Hattori

 昭和41年1月。福島県いわき市に日本初のテーマパーク「常磐ハワイアンセンター」がオープンした。センター最大の呼び物は、地元の少女たちによる情熱的なハワイアン&ポリネシアン・ダンス。昭和30年代後半、この地域を支えてきた石炭産業がが石油へのエネルギー転換によって採掘規模縮小を余儀なくされた時、炭鉱会社が起死回生の新事業としてぶち上げたのが「東北にハワイを作る!」という奇想天外なリゾート構想だったのだ。センターのオープンまで1年もない昭和40年4月、日本初のフラ&ポリネシアンダンスの学校を設立。ここに集まった十数名の地元少女たちは、まったくの初心者からわずか数ヶ月の特訓でプロの舞台に立たされることになったのだ。

 映画『フラガール』はこの実話をもとにしたドラマ。石炭需要の冷え込みで危機に陥った炭鉱町が、ビッグプロジェクトで再生するという「プロジェクトX」型の素材。そこに素人娘が音楽で結束していく『スウィングガールズ』的な要素がプラスされて、さらには『ALWAYS 三丁目の夕日』的昭和ノスタルジーと、福島方言むき出しのローカリティがドッキングしている。内容的には、かなり欲張りなのだ。

 監督は李相日(り・さんいる)で、脚本は監督本人と羽原大介の共同名義。李監督は『青〜chong〜』や『69 sixty nine』でダイナミックな青春活劇を撮っているが、今回の映画はちょっと湿っぽい。時代色を出すためか、映画全編を明るいセピア色にしたのも気になる。物語は主人公が誰なのかわかりにくく、かといって集団劇としては構成が弱い。映画を観ながら、ずっとアバンタイトルが続いているような中途半端な気分だった。映画を観ていて、物語の中にすんなりと入っていけないのだ。

 どうもこの映画は、登場人物ごとのエピソードをどう処理していくかという部分で、ドラマ作りに失敗しているように思える。映画に最初に登場するのは早苗という少女で、彼女があまり乗り気ではない親友の紀美子をフラダンスに誘って物語はスタートする。この出だしでは早苗と紀美子の友情が物語の軸になりそうなものだが、なぜか早苗は物語の中盤で退場してしまう。かわって東京から来たフラダンスの教師平山まどかや、同期のダンサーである小百合、紀美子の兄や母、ハワイアンセンターに就職した元炭鉱夫たちのエピソードなどが続いていくのだが、エピソードがどれも細切れで大きなドラマに収斂していかない。オープンまで時間がないのに練習がはかどらないというサスペンスで全体をまとめる手もあるだろうに、それすらやっていない。脚本としては、まだまだ未完成な生煮え状態だ。

 しかし映画の持つ中途半端な印象は、最後のステージ・シーンで一気に吹き飛ぶ。それまでの映画が60点だとすれば、このダンスシーンは150点のデキだ。料理はそこそこでも、デザートが最高に美味いコース料理。満腹です。

9月23日公開 シネカノン有楽町ほか全国
配給:シネカノン
2006年|2時間|日本|カラー|SRD
関連ホームページ:http://www.hula-girl.jp/
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