不都合な真実

2006/08/25 UIP試写室
地球温暖化の危機を元アメリカ副大統領アル・ゴアが警告。
優れた教育・人物ドキュメンタリー。by K. Hattori

 クリントン政権で2期8年に渡って副大統領を務め、2000年の大統領選挙でブッシュに破れたアルバート・ゴア。議員時代から環境問題の専門家として知られていた彼は、現在世界各地を飛び回って、地球温暖化についてのスライド講演を繰り返し行っているという。この映画はゴアのスライド講演の様子と、ゴア本人の生い立ちや思想を紹介するドキュメンタリー映画だ。映画全体はゴアのスライド講演の流れに沿っており、そこに適時、他の映像や素材が挿入される形式をとっている。この映画を観さえすれば、わざわざゴアの講演を見に行かなくてもその内容がバッチリわかるという寸法だ。

 化石燃料や森林を燃やしたことによって発生する二酸化炭素が、地球温暖化の大きな原因になっていることはよく知られている。温暖化を防ぐため、世界の主要工業国には二酸化炭素の排出規制が義務付けられ、各国ともその削減に努力している真っ最中だ。ただしこうしたことを定めた京都議定書の決定に、アメリカは参加していないのだ。アメリカ政府と経済界は、二酸化炭素の排出規制をすれば経済活動が滞るという主たる理由と、そもそも二酸化炭素規制には温暖化防止の効果がない、いやそれどころか、そもそも地球温暖化など起きていないし今後も起きるはずがないという一部科学者からの反論を理由として、二酸化炭素の排出規制に反対しているようだ。

 アル・ゴアはこうした「懐疑論者」の主張は間違っているとと、アメリカが一刻も早く二酸化炭素規制に取り組むことこそが最良の政策だと訴える。温暖化の証拠として取り上げられているのは、この数十年に撮られた世界各地の写真だ。かつては山腹や頂きに万年雪と氷河をたたえていた世界中の山々は、今や雪も氷も溶けて灰色や茶色の岩肌がむき出しになっている。北極や南極では氷山が解けて海水面がむき出しになり、赤道付近では海面温度が上がって大型のハリケーンや台風が次々に都市を襲う。各地で多数の犠牲者を出す熱波。アフリカの砂漠化。すべては地球が間違いなく熱くなっている証拠なのだ。

 地球は長い歴史の中で、何度も氷河期と間氷期を繰り返している。地球は何もしなくても、自然に熱くなったり冷たくなったりするわけだ。懐疑論者たちは現在の地球温暖化も、そうした自然のサイクルの一環なのだと主張する。しかしアル・ゴアはこうした主張を、地質学的に調べられた過去の温度データと比較して、現在の温暖化はとても自然なサイクルの中には収まり切らない、不自然で人為的なものであることを論証する。こうした数々の「事実」を突きつけられて、それでも「温暖化はない」「温暖化は深刻な問題ではない」と言い続けられるものだろうか?

 地球温暖化について、コンパクトにわかりやすくまとめられた映画だ。この問題について興味を持つ人も、興味を持たない人も必見の映画と言えるが、特に次代を担う子供たちに観てほしい。

(原題:An Inconvenient Truth)

10月28日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
配給:UIP映画 宣伝:メディアボックス
2006年|1時間36分|アメリカ|カラー|ヴィスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.futsugou.jp/
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