2番目のキス

2006/06/08 20世紀フォックス試写室
『ぼくのプレミア・ライフ』のアメリカ版リメイク。
ドリュー・バリモアがヒロインを好演。by K. Hattori

 映画『アバウト・ア・ボーイ』や『ハイ・フィデリティ』の原作者であるニック・ホーンビィの自伝的小説「ぼくのプレミア・ライフ」を、ドリュー・バリモア主演で再映画化した作品。じつはこの原作、1997年に本国イギリスで一度映画化されている。(日本未公開だがDVDは出ている。)今回の映画はオリジナル版の監督と原作者と製作者が、そのまま製作総指揮と製作者として名を連ねており、単に同じ原作を再度映画化しただけではない深いつながりを持っている。映画版『ぼくのプレミア・ライフ』の双子の兄弟が、『2番目のキス』なのだ。

 監督は『メリーに首ったけ』や『愛しのローズ・マリー』のピーター&ボビー・ファレリー。しかし今回の映画ではふたりの悪のりや悪趣味(露悪趣味みたいなもの)は影をひそめて、生き方を変えられない不器用な大人たちの、ちょっとビターなラブ・コメディになっている。こうした作品カラーの決定には、製作者でもあるドリュー・バリモアの意向が強く働いているのかもしれない。邦題は彼女が主演した『25年目のキス』と『50回目のファースト・キス』を踏まえたもので、映画会社はこれを“キス・シリーズ”最新作として売り出している。ファレリー兄弟の作品らしからぬタイトルだが、完成した映画でも中心にいるのはドリュー・バリモアだから、これは彼女に寄り添った邦題にしておいて正解なのかもしれない。この映画にファレリー兄弟の毒を期待すると裏切られることは間違いなく、それを見越して最初からファレリー兄弟の名前を控えめにしておくのも悪くはない選択に思える。

 原作とオリジナル映画が描いているのは、プロサッカーチーム「アーセナル」の活躍に一喜一憂する熱狂的な地元サポーターたちの姿だった。今回の映画では物語の舞台をアメリカのボストンに移し、応援する対象を地元の野球チーム「レッドソックス」に変更している。野球シーンにはボストン・レッドソックスとMLBが全面協力。この映画を撮影した年はレッドソックスが86年ぶりの優勝を遂げた記念すべきシーズンとなったが、この映画ははからずもチーム優勝までの過程を追ったセミドキュメンタリーのような作品になっている。映画を観ているときは最後の優勝シーンをどう撮影したのか疑問だったが、これも優勝決定の試合にカメラマンや出演者を集めて現場で撮影したのらしい。

 冬の間は申し分のない恋人なのに、野球シーズン開幕と共に野球ベッタリになる男というのはアメリカに結構いるのかもしれない。ミュージカル映画『くたばれ!ヤンキース』には「1年の半分を私は独身で過ごす」と野球ファンの妻が嘆くナンバーがあった。ジミー・ファロンは模範的な教師と、熱狂的な野球ファンの二面性をうまく表現していたと思う。どちらもまったく自然体で、その人そのもののキャラクターに見えるのだ。バリモア嬢も30歳(まだ30!)でいい女っぷり。

(原題:Fever Pitch)

7月8日公開予定 渋谷アミューズCQN
配給:東京テアトル 宣伝:メディアボックス
2005年|1時間43分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.theatres.co.jp/nibanmenokiss/
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