ラブ★コン

2006/05/19 松竹試写室
同名人気コミックを映画化した青春ラブコメディ。
藤澤恵麻の表情が素晴らしい。by K. Hattori

 背が高いことが悩みの女子高生と背が低いことが悩みの男子高校生の、チグハグな恋模様を描いた人気コミックの実写映画版。世の中にはどういうわけか、男女のカップルにおいては男の方が年上で背が高く、女性の方が年下で背も低いことを、「普通」であり「好ましい」組み合わせであると考える風潮がある。(社会人になれば、男の方が高学歴で高年収、女は学歴や年収が下でも構わないという似たような基準があったりもする。)こうしたことは何度か恋愛を経験すれば、男女関係においてあまり大きな意味のあることだとも思えなくなるだろう。しかし恋愛経験の乏しい中学生や高校生にとって、こうした社会的基準はかなり大きなカセになるようだ。下らないといえば下らない。しかし十代の恋愛なんて、そんなものなのだ……。

 背が高いから恋愛ができないとか、背が低いから恋人失格だとか、そんな決めつけはまったく下らない。下らなさ過ぎて笑うしかないものだ。だからこの映画は、堂々とそれを笑っている。背の高さの悩みという当人たちにとってはひどく深刻でも、周囲から見ればバカバカしいとしか思えない悩みを、バカバカしいものとして豪快に笑い飛ばしている。背の高さに限らず、身体的なコンプレックスは誰にだってあるものだ。この映画の中では担任教師のカツラがその象徴であり、これもまた笑いの対象になっている。笑え、笑え、思い切り笑い倒せ。自分の努力で解決できることならともかく、そうではない悩みは笑って済ませるしかないのだ。この映画の楽しさと面白さの半分は、悩みを笑いに転化するこの思い切りの良さにある。

 だがそうした映画のテーマなどとは無関係に、この映画を観ていて楽しいのはヒロインを演じた藤澤恵麻が魅力的だからだ。彼女はこれまでにNHK朝ドラの「天花」や映画『奇談』のヒロインとして何度も顔を観ているのだが、今回のようなコメディは初めて。これがイイのだ! 一所懸命になったりムキになったりすると、彼女の鼻の穴はモロに正面を向く。この映画における彼女の豊かな表情や感情表現を、大いに助けているのはこの鼻の穴に他ならない。かつてこれほど、鼻の穴を駆使して役の心を語った女優がいたであろうか! 「目は口ほどに物を言い」は常識だが、鼻の穴がこれほど雄弁な女優はこれまで観たことがない。

 好きな男の子に告白する踏ん切りが付かず、身悶えするヒロインの姿の可愛さ。告白を冗談と受け取られ、それに泣きながら抗議する表情。感情を全身で表現するオーバー気味の芝居はこの映画全体の方針でもあるようだが、その中でも人一倍大きな感情表現に成功しているのは藤澤恵麻であり、その大きなチャームポイントになっているのが彼女の鼻の穴であることは間違いない。

 関西弁の台詞の掛け合いがじつに軽やか。ちょっと怪しげなところもあるけれど、それも味のうち。僕はこの映画と藤澤恵麻が大好きになりました!

7月15日公開予定 シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
配給:松竹
2006年|1時間40分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.lovecom-movie.com/
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