恋する日曜日

LOVE ON SUNDAY

2006/05/11 メディアボックス試写室
地方都市を舞台に繰り広げられる高校生たちの四角関係。
幼なじみ同士の淡い恋のすれ違い。by K. Hattori

 高校2年の1学期終業と同時に、父の仕事の都合で転校することが決まっている晶。長く住み慣れた故郷を去るのも寂しいが、それより気になるのは幼なじみでクラスメイトでもある直のこと。彼に自分の気持ちを伝えるべきか否か。その答えが出ないまま、町で過ごす最後の日が来た。親しい友人を何人か集めると偽り、直とふたりで1日をすごそうとしていた晶。ところが直は、クラスメイトの環を連れてきて、彼女はとんだおじゃま虫。じつは彼女、わざわざ晶と直の仲を邪魔するためここにやってきたのだ。環と付き合っていた楽先輩が晶を好きになり、今日も学校の帰り道に猛烈なアタックをかけてきたばかり。環はその当てつけに、晶の直への気持ちを知りつつ直にちょっかいを出しているのだ。そんなことも知らず、憧れの環にちやほやされてすっかりのぼせ上がっている直。いたたまれず部屋を飛び出した晶は、町でばったり楽と出会い、追いかけてきた直と環も合流して、4人は一緒に夜を過ごすことになる……。

 高校生の四角関係を描いた廣木隆一監督の新作は、BS-iで放送されていたドラマシリーズ「恋する日曜日」の劇場版だ。主人公の晶を演じるのは水橋貴己。この映画で観る限り、彼女はものすごく美人でもかわいくもなく、少し垢抜けないところも感じられる。しかしそれが、この映画の役には合っている。子供の頃からずっと好きだった幼なじみに気持ちを伝えられず、ついつい乱暴な口をきいたり、つっぱって見せたりする晶の不器用な強がりが可愛い。ふてくされたような普段の表情と、弓道場で弓を引く時のキリリと引き締まった表情の対比の中に、この若い女優の美しさが隠れているように思う。

 撮影は長野県で行われたそうだが、このロケーションが映画に抜群の効果を生み出している。子供の頃に通った店や、子供の頃に遊んだ川、伝説の残る高校の校舎、あてもなくぶらつく商店街などが、この映画の重要な脇役になっているからだ。この映画で描かれているのは「初恋」だが、その背後にあるもっと大きなモチーフは生まれ育った故郷への「郷愁」だと思う。それは学校の屋上から町を見下ろすオープニングから、列車の窓から町をながめるエンディングまで一貫したこの映画のテーマなのだ。幼なじみへの淡い恋心は、そうした故郷への思いを象徴的な人物に置き換えたものに過ぎないのではないだろうか。

 都会での生活から故郷にUターンした女性のエピソードが、それを巧みに絵解きしているようにも思う。彼女にとって故郷と幼なじみとは、分けることができないひとつの風景なのだ。彼女はその風景の中に帰還し、かつての幼なじみも優しく彼女を受け入れる。

 主題歌はRCサクセションの名曲「君が僕を知っている」。「君」というのは幼なじみの直であり、故郷の風景のことでもある。晶はいつか故郷に戻るに違いない。その時、直はきっと彼女を受け入れるだろう。

7月公開予定 シネマート六本木
配給:パンドラ 宣伝:ライスタウンカンパニー
2006年|1時間29分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.bs-i.co.jp/koisuru/
ホームページ
ホームページへ