アンダーワールド

エボリューションズ

2006/04/17 SPE試写室
吸血鬼族と狼男族の決戦はさらにヒートアップ。
画面の青暗さがいいムードだ。by K. Hattori

 ケイト・ベッキンセール主演のバイオレンス・アクション・ファンタジー映画第2弾。監督は前作と同じくレン・ワイズマンで、前作『アンダーワールド』完成の翌年結婚しているふたりにとっては、初の夫婦共作ということになる。僕は前作にあまり感心しなかったのだが、今回の映画はちゃんと面白かった。ワイズマン監督も長編2作目でストーリーを語る技術がスキルアップしたのかもしれないが、それよりこの映画が面白くなったのは、話をむやみに広げず、小さな世界に閉じてしまった脚本の割り切りにあるのだろう。ここにはもはや、ヴァンパイア軍団もライカン(狼男)軍団も登場しない。映画冒頭には申し訳程度に過去の激しい戦闘が描かれているが、ヒロインのセリーンが登場して以降は、登場するキャラクターを整理してストーリーの枝葉を刈り込み、タイトでスピーディな物語が進行していくことになる。

 物語は前作の終了直後から始まる。しかしこちらは前作を3年前に観たきりなので、そういや前作はどんな話であったかな……と、まずはそのことが気になって、今回の映画を手さぐりで観ていくことになった。案外これが、自分の過去を探ろうとするヒロインの行動と重なり合って、すっかり彼女に感情移入してしまったりしたのだ。時々フラッシュ映像で挿入される過去の出来事の数々から、その意味をたどろうとするヒロインと、同じような映像から前作の内容を少しずつ思い出していく僕の意識とではまったく目指す方向が違うのだが、映画中盤以降、今回の物語の方向が前作とはまるで別方向に進んでいるが確認されてからは、それもまったく気にならなくなる。

 前作は敵対する一族同士が激突し合う政治的駆け引きの中で、ヒロインがひとりの兵士としていかに行動するかという映画だった。ヒロインは種族間の闘争という大きな世界観の中ではあくまで小さな存在であり、彼女は自分を取り巻く世界の有り様に翻弄される受け身のヒロインだったといえる。しかし今回は違う。ヴァンパイア族のリーダーだったビクターを殺し、ヴァンパイア族に追われる身となったセリーン。彼女はヴァンパイアとライカンの混血種となったマイケルと共に、やはり混血種として蘇ったヴァンパイア族の始祖マーカスと戦うことになる。そして物語はさらに過去、ヴァンパイアとライカンの誕生にまでさかのぼるわけだが、それがすべてセリーンの過去とつながっていくことになる。今回のセリーンは常に、大きく動いていく物語の中心にいるのだ。

 この映画に弱点があるとすれば、それはセリーンと恋人マイケルの関係に、あまり必然性や説得力が感じられないことだろう。マイケルはセリーンの孤独な戦いを支える同伴者として大活躍するのだが、ふたりの間にある精神的な結びつきはあまり掘り下げられておらず、マイケルは物語の中で自由に動ける便利な「お助けマン」になってしまったとように思う。

(原題:Underworld Evolution)

4月22日公開予定 有楽町スバル座ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2006年|1時間46分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SRD、SR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/underworldevolution/
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