ピーナッツ

2006/01/13 アスミック・エース試写室
ウッチャンこと内村光良の映画監督デビュー作。
小さくまとめすぎて平板な印象。by K. Hattori

 お笑いタレントの内村光良(ウッチャン)が、念願の映画監督デビューをはたした作品。再開発計画が持ち上がっている故郷の町で、スランプ中のスポーツライターが仲間たちとの草野球を通じて再生していく様子を描く。内村監督は脚本と主役も兼任。(脚本は益子昌一との共同名義。)物語にはよくわからない点もあるのだが、映画としてはまずまずの形にまとまった小さな佳作。出演者がテレビでお馴染みのお笑い芸人ばかりなので、映画全体がそのイメージに引っ張られてしまうことも心配したが、これは途中からあまり気にならなくなった。登場人物たちはそれぞれに、自分たちの持ち味を役柄に投影しながら、のびのびと役を演じていたと思う。

 話がよくわからなくなっている理由はふたつある。第1には主人公の境遇がよくわからいこと。第2は主人公の周囲にいる人々が、町の再開発に反対する理由がよくわからないことだ。このふたつは物語の中心に関わる大切な事柄なので、その点が説明不足や曖昧な描写になっているのはこの映画の欠点だろう。

 主人公は地元での草野球試合を通じて自らのスランプを乗り越えていくわけだが、映画を観てもこのスランプの理由がよくわからない。なぜ彼は1年も何も書けないほどのスランプに陥ったのか。そこには何らかの理由があるはずだし、きっかけとなる出来事もあるはずだ。少なくとも映画の中ではそうした点が明確にならないと、最後に主人公が再生していく過程がご都合主義になってしまう。この主人公周辺のエピソードでは同棲中の恋人の存在が重要なキーになっているようなのだが、この関係もエピソードとしては厚みに欠ける。主人公がフリーのライターと編集者という関係になっている点が、監督本人の私生活に近くて照れがあったのだろうか……などと勘繰ってしまうのだ。

 映画のクライマックスで、野球チームの監督は地域再開発事業の存廃を懸けて、開発業者のチームと交流試合をすることになる。しかしこれがどうも盛り上がらない。寂れきったシャッター商店街の様子は映画を観る側に「再開発もやむなし」の印象を抱かせるし、この業者にしても別段悪徳業者というわけではないのだ。チームの監督やメンバーたちは、いったい何に反対しているのだろう。それは駅前再開発事業全体に対してなのか、それとも自分たちが愛してきた野球場が消えてしまうことに対してなのか。商店街の会長を務める監督自身にも、そのあたりは未整理なままになっているのではないだろうか。これでは映画の中の選手たちと、映画を観ている側が一致団結できない。彼らが何のために戦うのかが、よくわからないからだ。

 悪い映画だとは思わないが、弱い映画だと思う。ここにはスポーツ映画に不可欠な「熱さ!」がない。戦いのはてに燃えつきるカタルシスがあれば、試合結果などどうでもよかったと思うのだけれど……。細かな起伏には富んでいても、大きな山のない映画だと思う。

1月28日公開予定 渋谷QAX CINEMAほか全国ロードショー
配給:コムストック 宣伝:DROP
2005年|1時間55分|日本|カラー|ヴィスタサイズ1:1.85|DTS
関連ホームページ:http://www.peanuts-movie.jp/
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