アブノーマル・ビューティ

2006/01/11 TCC試写室
死に魅せられた少女が出会った真実の恐怖とは?
異色のミステリー・ホラー映画。by K. Hattori

 『the EYE【アイ】』で世界的な注目を浴びた、ダニー&オキサイド・パン(パン・ブラザース)製作のミステリー・ホラー映画。今回は製作がパン・ブラザースで、監督がオキサイド・パンというクレジットになっている。主演はレース・ウォンとロザンヌ・ウォンの姉妹による香港の人気ユニット「2R」。つまりこれは、兄弟監督と姉妹女優の組み合わせだ。

 美術学校で絵画や写真を学んでいるジンは、偶然交通事故現場を写真に撮ったことから「死」に魅せられていく。事故写真をきっかけにして、彼女の写真のモチーフは死と死体と血に染められていく。そんなジンの様子を、親友のジャスミンは心配そうに見つめている。死に引き寄せられた挙句に自殺未遂のような行動にまで及んだジンは、ジャスミンに子供時代のトラウマとなった体験を語る。それをきっかけにして、ジンは死から開放されたように見えたのだが……。

 映画は前半と後半に分離する2段ロケット式。死に引き寄せられるジンというヒロインの物語がまずあり、それが一度解決したところで、次の物語の幕が開く。最初の物語と次の物語は「死」というテーマでつながりを持つものの、話としてはまったくつながっていない。そのため映画は全体としてひとつのトーンを維持したまま、何の伏線もなしにいきなりドラマの第2章が始まるのだ。これは恐い。1時間半弱の映画の中で、最初のドラマをたっぷりと見せて、続く第2部は手早くさっさと切り上げるあたりはうまい。観ている側が何がなんだかわからない戸惑いの中にあるうちに、映画全体に幕を引いてしまう手際のよさ。

 この後半だけをさらに長くすることも可能だろうし、場合によっては前半をもっと縮めて後半に至る伏線にすることもできただろう。でもこの映画はそうせずに、映画の最後にあるオチで、映画全体をヒロインの病んだ心の旅としてまとめることを狙っているのだと思う。このオチは早い段階で予想できるのだが、これ自体は謎解きの焦点ではないので構わない。

 映画を観ている人たちは、映画の前半で見せるヒロインの奇矯な振る舞いに戸惑いを感じるだろう。このヒロインは異様だ。しかし彼女は親友の手助けもあって危機一髪で救われる。その結果として第2部のヒロインには誰もが感情移入し、彼女の戦いぶりに肩入れするだろう。しかし最後のオチで、観客はまたヒロインから強烈なカウンターパンチを食らう。「そうか、やっぱり!」と思う。これは想定の範囲内。しかしいくら想定されるパンチでも、ここぞという場で一撃を食らえば頭がクラクラするもんです。

 ジャスミンがジンに対する同性愛的な愛情を告白するシーンは、同性愛に対する差別的な演出意図を感じる。香港の観客は主演のふたりが姉妹であることを知っているわけだから、ジャスミンのジンに対する愛情を観客は近親相姦と重ね合わせて薄気味悪く感じるわけだ。

(原題:Abnormal Beauty 死亡寫眞)

2月公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:リベロ
2004年|1時間38分|香港|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.
DVD:アブノーマル・ビューティ
DVD (Amazon.com):Ab-Normal Beauty
関連DVD:オキサイド・パン監督
関連DVD:レース・ウォン
関連DVD:ロザンヌ・ウォン
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