フォー・ブラザーズ

狼たちの誓い

2005/11/10 UIP試写室
養母を殺された兄弟たちが暗殺者に復讐する。
テンポの良さで最後まで楽しい。by K. Hattori

 感謝祭を目前にしたデトロイトで、小さな食品店に押し入った強盗が店員と客を射殺して逃げる事件が起きた。たまたま客として店にいて殺されたマーサーは、生前から多くの孤児に里親を世話してきた女性。そんな彼女の死の知らせを受けて、4人の息子たちが実家に戻ってくる。肌の色も性格も違う彼らは子供の頃からひどい乱暴者たちで、里親としての引き取り手がなかったためマーサー本人が養子にした子供たちなのだ。札付きの不良少年だった彼らは警察を信用せず、自分たちで独自に母を殺した犯人を探そうとする。やがて彼らは母が偶然殺されたのではなく、何者かによって強盗事件を装って殺されたことを知る。いったい犯人は誰なのか?

 マーク・ウォールバーグ主演のアクション・ドラマで、話の筋としてミステリー仕立てになっている。しかしこの映画の謎解きは話の進行役でしかなく、主役にはなっていない。映画を先に進めるためには、母親がたまたま殺されたのではなく、何かの陰謀に巻き込まれたことにしなければならない。そしてその黒幕は、観客が映画の序盤から見て知っている誰かでなくてはならない。この映画はそんな定型のストーリー・フォーマットを、忠実になぞっているだけだ。物語が最初に第一歩を踏みだすポイントは、兄弟が母の死に何者かの明確な意図を確信する場面だが、映画を観ていてもそれがなぜなのかはわからない。防犯カメラの映像を見ていた兄弟が、「犯人は最初から母さんを殺すのが目的だったんだ!」と言えば、とりあえずそれをそのまま受け入れるしかない。

 でもそれって本当なの? 単なる思い込みじゃないの? 親しい人が行きずりの強盗にたまたま出くわし、たまたま殺されてしまったことが納得できず、その死の背後に何らかの意図が働いていたはずだという気持ちが、陰謀説に結びついているだけじゃないの? しかし映画はこの直後に、兄弟たちの推論が間違っていなかったことを観客に示す。しかしできればそのタイミングは、もう少し早い方がよかった。映画の中では、この部分が一番の弱点になっている。

 主人公たちは決して善人ではない。法を無視して脅迫と暴力で証拠や証言を集め、警察に先駆けて自分たちだけで犯人に復讐しようとする彼らは、社会の秩序を乱すアウトローだ。主人公たちには彼らなりのモラルがある。彼らは彼ら自身の正義にもとづいて行動し、多少乱暴なやり方であることは十分に理解した上で、母を殺した黒幕に復讐しようとする。しかし彼らの敵は、そんな正義やモラルとは一切無縁。ただただ暴力で人々を支配し、自分の言いなりにしようとする純粋な悪なのだ。この悪役の造形には弱者の居直りという背景があるのだが、それが言葉だけの説明で終わってしまったのはちょっと残念。

 娯楽映画としてはなかなかのでき。主演のマーク・ウォールバーグははまり役だった。

(原題:Four brothers)

11月19日公開予定 みゆき座ほか全国東宝洋画系
配給:UIP
2005年|1時間48分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SR
関連ホームページ:http://www.fb-movie.jp/
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