ヘッドハンター

2005/08/03 TCC試写室
狙った獲物は決して逃さないヘッドハンターの正体。
ビジネスの世界を舞台にしたサスペンス。by K. Hattori

 経営難のハイテク・ベンチャー企業ビズトラック社で開発のチームリーダーとして働くベン・キーツは、念願だった新商品の開発に成功して仲間たちとその喜びを分かち合っていた。あとはこの新商品をテコに会社を上場しさえすれば、これまでの貧乏暮らしともおさらばだ。だがそんな彼のもとに、ビンセント・パーマーと名乗るヘッドハンターが現れる。ライバルの大企業がベンを高給で引き抜こうとしているのだ。ベンは転職の誘いを断るが、パーマーはまったく諦めようとしない。それどころかあの手この手の手段を使ってベンにつきまとい、家族を懐柔したり、会社の同僚たちに悪い噂を流すなど、なりふり構わぬ方法でベンを口説き落とそうとするのだが……。

 ヘッドハンターのビンセント・パーマーを演じるのはクリスチャン・スレーター。最初彼はヘッドハントされる技術者役で出演依頼を受けたそうだが、脚本を読んでヘッドハンター役に変更したそうだ。スレーターが頭脳明晰なハイテク技術者を演じてもあまり似合いそうになく、これは頭のおかしなヘッドハンター役で正解だったと思う。これで技術者役にもっとメジャーな俳優が配役されれば映画はもっと格が上がっただろうに、テレビ俳優のギル・ベロースではちょっと物語の吸引力が弱い。上手い俳優だとは思うが、観客の気持ちをガッチリつかみ取る力強さに欠けているのだ。共演のエステラ・ウォーレンやマイケル・クラーク・ダンカンの方が俳優としての華やかさがあって、ギル・ベロースの影が薄くなってしまったような気もする。

 映画は最初にビンセント・パーマーの怪物ぶりを観客に見せてしまうのだが、これが良かったのか悪かったのかは評価が微妙なところだ。これはベンの視点に立って、最初は人当たりのいい熱心なヘッドハンターに見えていたパーマーが、徐々に狂気の片鱗を見せていくという構成にした方が良かったのかもしれない。パーマーの行動がどこまでエスカレートするかわからないという不安と恐怖を、観客も主人公と一緒に体験する方がサスペンスは盛り上がるのではなかろうか。

 優秀な技術者だということでライバル社から目をつけられ、強引なヘッドハンターのなりふり構わぬやり口に苦しめられるベンは確かに気の毒で、まったく非がないのに会社の同僚に疑いの目で見られたり、家族から責められたりする様子には同情してしまう。しかし主人公がどこでパーマーの正体に気づき、どこで家族もそれに気づくのかというポイントが見えにくい。観客はパーマーの正体を知っているのに、主人公はそれを知らないというのがサスペンスなのだが、この映画ではそれがうまく機能していないのではないだろうか。病気の社長や警備会社の担当者をうまく使って、サスペンスをより盛り上げるきっかけはいくらでもあると思う。この辺は脚本できちんと詰めきれていないのかもしれない。

(原題:Pursued)

9月23日公開予定 銀座シネパトス
配給:インターフィルム 宣伝:フリーマン
2004年|1時間36分|アメリカ、カナダ|カラー|ビスタサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=6279
DVD SpecialShop DiscStation 7dream_88_31 TSUTAYA online
ホームページ
ホームページへ