山猫は眠らない3

決別の照準

2005/06/17 SPE試写室
海兵隊のベテラン狙撃手を主人公にしたシリーズ第3弾。
だんだん話が漫画チックになってきた。by K. Hattori

 トム・ペレンジャーが凄腕の狙撃手に扮した、『山猫は眠らない』シリーズの3作目。緻密な描写でガンマニアやアクション映画ファンをうならせた1作目から、2作目『山猫は眠らない2/狙撃手の掟』までは10年のブランクが空いたが、今回は前作からわずか2年での続編登場となった。(ちなみにIMDbによると1作目は劇場映画、2作目はテレビ放映、3作目はストレートビデオだとか。)

 海兵隊の出戻り曹長になったトーマス・ベケットに、極秘の狙撃任務が与えられた。ターゲットは30年前ベトナムで行方不明になり、公式には戦死とされていたポール・フィネガン。皮肉なことに、彼はベケットの親友で命の恩人だった男。戦死の知らせが届いた後はベケットが未亡人を支え、遺児ニールの父親がわりにもなってきた。だがフィネガンは死んでいなかったのだ。戦争末期にCIAに雇われて姿を消した彼だったが、30年後の今ではイスラム過激派とも取引をするベトナム・マフィアの黒幕となっていた。フィネガンは今や、アメリカにとっても危険なモンスターとなっていたのだ……。

 1作目ではビリー・ゼイン、2作目ではボキーム・ウッドバインとコンビを組んだトム・ペレンジャーが、今回組む相手はバイロン・マン。『キャットウーマン』に出演していたというアジア系俳優だが、それがどんな役立ったかさっぱり覚えていない。しかも今回の映画では彼が観測手ではなく、ベトナムで警官をしながらCIAの仕事もしているという現地コーディネーターのような役回りで登場するのだ。映画から観測手が消えた段階で、この映画は『山猫は眠らない』シリーズとしてのアイデンティティを放棄しているように感じてしまう。単独行動を始めた途端に、凄腕のスナイパーはスーパーマンになってしまうからだ。

 秘密任務でベトナムに残ったアメリカ兵が現地でミニ王国を築き、アメリカ政府がそれを抹殺しようと殺し屋を差し向ける物語は、コッポラの『地獄の黙示録』のミニチュア版ではないだろうか。ベトナムの警察でベケットとフィネガンが対話をするシーンや、王を失った王国の住人たちが王を殺した男にひれ伏す場面など、まるっきり『地獄の黙示録』の規模縮小バージョンだ。『地獄の黙示録』から25年たっても、アメリカ人のベトナムに対する意識などあまり変わっていないのかもしれない。

 「ワン・ショット、ワン・キル(一撃必殺)」が信条のベケットが、初めて任務に失敗する今回のお話。しかしその失敗の理由が、僕にはイマイチよくわからなかった。かつての親友を撃たねばならないという心理的動揺があったのか? それとも右手の怪我の後遺症による手の震えが原因なのか? あるいはターゲットが動いた? 「なぜ失敗したのだろう」と考え込んでいるうちに、ベケットは別の狙撃手に狙われる。ここはもう少し脚本で整理してほしかった。

(原題:Sniper 3)

7月16日公開予定 銀座シネパトス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給協力:メディアボックス
2004年|1時間30分|アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/sniper3/
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