マイ・ブラザー

2005/05/12 UIP試写室
年の近い兄弟の葛藤と絆を描く韓国映画。主演はウォンビン。
最後はあざといと思うがそれでも泣ける。by K. Hattori

 性格のまったく違う二人兄弟の関係を描いた韓国映画。主演はウォンビンとシン・ハギュン。優等生の兄と不良の弟がいて、親が兄ばかりを可愛がるという関係は、ジェームス・ディーンの『エデンの東』にちょっと似ている。両親が離婚しているという設定も同じだ。しかし『マイ・ブラザー』に登場する一家は裕福ではないし、両親の離婚によって兄弟を育てているのは母親だ。ケンカに明け暮れる弟はハンサムで腕っぷしが強く、学校中から一目置かれ、女の子たちにもモテモテ。それに対して兄の側は顔に先天性の障害があり、成績は抜群だが身体も小さくてひ弱な体質。『エデンの東』では兄貴が自分の優等生ぶりを鼻にかける様子が見えるが、『マイ・ブラザー』にそうしたところはない。むしろ優等生の兄は兄なりに、弟をうらやましく思っていたりもする。

 兄弟の確執をテーマにした映画は多いが、その描かれ方は図式的になることが多く、僕は不満に思うことが多かった。(こうした図式化のルーツには、旧約聖書の「カインとアベル」や「ヤコブとエサウ」「ヨセフ物語」、新約聖書の「放蕩息子の帰還」の故事などが強い影響を与えているのかもしれない。例えば『エデンの東』は「カインとアベル」の現代版だった。)しかしこの『マイ・ブラザー』は、そうした図式化や類型化を巧みにすり抜けて、多感な青春期を送る兄弟たちの関係や心の動きをリアルに描き出す。僕自身年齢の近い兄弟がいるので、映画を観ながら「こういうのってあるよな〜」と思うこともしばしば。これは個々のエピソードの問題ではなく、そこで生まれる関係性や気持ちの問題に、大いに心当たりがあるという意味だ。

 映画前半はウォンビン演じる弟ジョンヒョンのキャラクターがずいぶんと軽薄なものに思えるのだが、兄ソンヒョンが進学して家から消えると人物像にずっと深みが増していく。これは物語の前半で、映画がソンヒョンのエピソードに大きく肩入れしているのも原因だと思う。しかし映画前半でソンヒョンの苦悩や葛藤を十分に描いているからこそ、映画後半で出番が少なくなってからも、彼の気持ちは観客にちゃんと伝わる。前半がないと、ソンヒョンは単なる優等生になってしまってつまらない。前半が物足りないのは事実なのだが、後半で十分にその埋め合わせになっていると思う。

 クライマックスの悲劇はそれまでのリアルな人間関係を壊してかなり図式的で類型的なお話の組み立てになってしまったが、この図式が観客の感動を生み出す力になっている。あざといが、じつに効果的。効果があるとわかれば、堂々とそれを押しつけてくるのが韓国流なのかも。僕も「ちくしょう、やられたぜ!」と思いながら、しっかりウルウルさせられてしまいました。

 主演ふたりは最高だが、母親役のキム・ヘスクもよかった。学校に呼び出された帰り道、兄弟に言い聞かせる台詞が感動的で泣かせる。

(原題:Uri Hyeong)

5月28日公開予定 シネマスクエアとうきゅう、109シネマズMM横浜
配給:UIP
2004年|1時間53分|韓国|カラー|ビスタ|SRD、SR
関連ホームページ:http://www.my-brother.jp/
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